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dementia:psp [2024/10/07] – [歴史と病型分類] nonbe | dementia:psp [2024/10/07] (現在) – nonbe | ||
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==== 疫学==== | ==== 疫学==== | ||
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+ | 以前は 10万人あたり 5人前後とする報告が多かったが、高齢者の増加と共に頻度も増え、最近では 17〜20 人程度とする報告もある。従って、10万人あたり 5〜20 人程度がこの病気の頻度と考えられ、2012年の医療受給者証保持者は 8, | ||
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+ | 罹病期間は Richardson 症候群 5.9年、PSP-P は 9.1年とされる。死因は誤嚥性肺炎、窒息、栄養失調、外傷の頻度が高い。発症 1年以内の転倒、早期の嚥下障害、尿失禁は予後不良である | ||
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==== 診断 ==== | ==== 診断 ==== | ||
+ | === a. 臨床診断指針 === | ||
+ | NINDS-SPSP(National Institute of Neurological and Stroke and Society for PSP)による診断指針(1996年)とその信頼性試験結果(1996年)が報告されたが、不十分な診断指針であった | ||
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+ | === b. 神経病理学的、生化学的指針 === | ||
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+ | 病理学的診断基準は異常なリン酸化タウの蓄積で、タウの蓄積は星状膠細胞と神経細胞の双方に見られる。アストロサイトへの異常リン酸化タウの蓄積は細胞体から近位軸索に認められ、tufted astrocyte もしくは glial fibrillary tangles と呼ばれる。tgufted astrocyte は病理学的 PSP の診断指標である。そのほか、細い紐状の astrocytic thread も見られる。神経細胞は細胞数の減少と共にグロボース globose 型神経原線維変化 neurofibrillary tangle(NFT)、顆粒空胞変性を示す。電子顕微鏡的検索から、globose 型 NFT は Alzheimer 病のリン酸化タウ蛋白であるペアになったらせん状フィラメント paired helical filaments(PHF)と異なり、12〜15nm の直線上線維からなる。病変は歯状核、赤核、淡蒼球、視床下核、被蓋や中脳水道周辺、上丘を含む眼球運動関連神経核病変、下オリーブ核、脳幹被蓋に分布する。病変は淡蒼球・視床下核・黒質病変はおおむね全例でみられ、次いで被蓋・上丘・第三脳神経核・被蓋病変の頻度が高い。生化学的には蓄積するタウは 4RT で、PSP は 4RT に属する疾患の一つである。4RT は臨床像が多彩な特徴を有し、臨床診断と病理診断に移動があることが少なくない。このため、より有用な診断に結び就くバイオマーカーが求められる | ||
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==== 治療 ==== | ==== 治療 ==== | ||
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+ | 原因療法は開発されていない、対症療法としてレボドバ、アミトリプチンが有効との報告があるが不十分である。認知障害、行動障害についても対症療法、認知行動療法などがなされているが、何れもエビデンスに乏しい。心理面接、リハビリテーションも同様にエビデンスに乏しい、転倒に対する応急処置としてヘッドギアなどが使用される。 | ||
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==== 今後の課題 ==== | ==== 今後の課題 ==== | ||
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+ | タウのハプロタイプは、前述したようにコーカシアンと日本人とでは異なり、病像、経過、神経病理所見などに差異があるかを検討する必要がある | ||
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==== 解説 ==== | ==== 解説 ==== | ||
- | note | + | **PSP の病型と病理学的事項の補足** |
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+ | PSP の病型は現在拡散傾向にあるが、病理学的基盤を考慮すると 図1 に示されるようにタウ病変の分布に基づくことが示唆される。病像の進展によるタウ病変分布が変化するとは、臨床経過から単純に考える事は不可能であり、タウ病変の拡散がとどまる様式を検討していくことも PSP 研究の課題と思われる。また、頻度は少ないが様々な遺伝子変異による遺伝性 PSP も知られており 表2 に列挙する | ||
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