===== 12-1 神経原線維変化型老年期認知症とは ===== {{fa>fas fa-question?24}} 神経原線維変化型老年期認知症 senile dementia of the neurofibrillary tangle type(SD-NFT)とはどのような疾患か {{fa>far fa-clipboard?24}} SD-NFT は、海馬を中心に対数の NFT が認められるが、老人斑をほとんど認めない老年期認知症であり、臨床的には Alzheimer 型認知症と診断されていることも多い ---- 1. 概念 SD-NFT は、海馬を中心に多数の NFT が認められる老年期認知症であり、辺縁系神経原線維変化認知症 limbic NFT dementia、神経原線維変化優位型老年期認知症 NFT-predominant form of senile dementia、神経原線維変化を伴う老年期認知症 senile dementia with tangles, tangle only dementia、新駅原線維変化優位型認知症 NFT-predominant dementia などの呼称もある。発症は加齢と共に増加し、高齢者認知症剖検例の 1.7〜5.6% と報告されており、90歳以上の認知症発症例の 20% を占めるとされちる。久山町研究における認知症例中 2.9% が SD-NFT と分類され、剖検例に限れば 4.9% であった。海馬領域は加齢と共に NFT が出現しやすい領域であり、SD-NFT は脳の老化過程が加速された病態と考えられる。NFT が内側側頭葉を中心に分布し、老人斑が無いか、小数にとどまる状態を示す病理学用語として、原発性年齢関連タウオパチー primary age-related tauopathy(PART)が提唱され、臨床的には認知機能正常〜経度認知障害〜認知症(SD-NFT)の状態を含む概念として捉えられている 2. 臨床的特徴 NFT が海馬領域に大量に認められるが、新皮質にはまれである。NFT の超微形態やタウ蛋白のアイソフォームは Alzheimer 病と同様である。老人斑はほとんどみられず、脳血管へのアミロイドβの沈着も Alzheimer 病より優位に軽度である。脳の老化過程が加速された病態と考えられており、臨床的特徴は以下のとおりである - 記号付きリスト後期高齢者に多い - 緩徐進行性 - 記憶障害で初発 - 他の認知機能障害や人格変化は比較的軽度 - まれにせん妄、軽度の錐体外路症候が出現 - 画像にて海馬領域の萎縮、側脳室下角の拡大(大脳皮質のびまん性萎縮は比較的軽度) 3. 鑑別診断 SD-NFT は高齢認知症者のなかに少なからぬ頻度で見られ、多くは生前 Alzheimer 型認知症と診断されており、嗜銀顆粒性認知症 argyrophilic grain demantia や血管病変との重複病理も多い 高齢発症の Alzheimer 型認知症は、記憶障害が主体であること、病変が側頭葉内側部に強調されることなど、SD-NFT との共通点が多いが、SD-NFT の方が緩徐進行性である。アミロイド PET は鑑別に有用である 嗜銀顆粒性認知症も SD-NFT と同じく高齢発症タウオパチーに分類され、主に内側側頭葉に病変があり、記憶障害で発症するなど SD-NFT との共通点が多いが、嗜銀顆粒性認知症は記憶障害が主徴ではあるものの、易怒性、行動異常、性格変化などが見られることが特徴であり、鑑別に役立つ。また、嗜銀顆粒性認知症の内側側頭葉萎縮は非対称であり、鑑別に有用である。内側側頭葉萎縮が、嗜銀顆粒性認知症では前方優位であり、SD-NFT では比較的後方に目立つことも鑑別の一助になる 4. 治療 実臨床では、SD-NFT の多くは Alzheimer 型認知症としてコリンエステラーゼ阻害薬が投与されているが、SD-NFT に対して有効性が証明された治療法はない ---- {{fa>fas fa-sign-out?24}} [[https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html|認知症疾患診療ガイドライン]] {{fa>mail-reply?16}} [[dementia:sd-nft|神経原線維化型老年期認知症]]