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===== 6. Alzheimer 型認知症 =====
{{fa>fas fa-map-marker?24}} 目的
Alzheimer 型認知症の診断、治療、ケアと社会的対応に関する最近の報告をレビューし、エビデンスと推奨グレードを明らかにする
{{fa>fas fa-map-marker?24}} 概念
Alzheimer 型認知症は、病理学的に神経原線維変化(tauopathy)とアミロイド(Aβ amyloidosis: 大脳皮質、脳血管)の 2つの変化を特徴とする Alzheimer 病によって大脳皮質、海馬、前脳底部で神経細胞死、シナプス減少、アセチルコリン低下が起こり、認知症を発症した段階である。主要症状は緩徐進行性の出来事記憶 episodic memory 傷害に始まる記憶と学習の障害が典型的で、失語、遂行機能障害、視空間機能障害と人格変化など社会的認知機能の障害に進展する。後部大脳皮質萎縮症 posterior cortical atropy、ロゴペニック型失語 logopenic aphasia、前頭葉型 frontal vriant などの視覚構成機能や失語、前頭葉機能障害などで発症する非典型例もみられる
{{fa>fas fa-map-marker?24}} 病態
常染色体優性遺伝性 Alzheimer 病では APP、PSEN1、PSEN2 に多数の遺伝子変異が認められており、いずれの変異も Aβ42 産生亢進を起こすことが明らかにされている。Aβ の産生増加、輸送・代謝の低下により、形成された Aβ 凝集体(オリゴマー)がシナプスを障害し、神経原線維変化と神経細胞死を誘発し、軽度認知障害や認知症を発症する機序が推定されている(Amyloid β-tauopathy カスケード仮説)
{{fa>fas fa-map-marker?24}} 病状の進行と経過
特徴的な病状は海馬・側頭葉内側面の障害によるもの忘れと記銘力障害、側頭・頭頂・後頭領域障害による語健忘、視空間性障害、失行、側頭葉外側面の障害による意味記憶障害、前頭葉障害による病識・自発性低下である。出来事記憶の障害が特徴的で、取り繕いや振り返りもしばしば見られる。中等度では即時記憶障害と近い順からの長期記憶障害が進行し、意味記憶障害と失語による使用できる単語の減少が加わる。重度ではほとんどすべての記憶が障害される
構成障害がよくみられ、時計、立方体や複雑な図形の描画模写がまず傷害される。観念性失行による日常用いる道具の使用障害、複数物品の使用障害、観念運動失行による口頭・視覚命令による模倣の傷害、肢節運動失行などの皮質症状が加わってくる。着衣失行も中等度 Alzheimer 型認知症で良く見られる症状で、これらの失行は習い覚えた動作としての手続き記憶の障害と合併して進行する。記憶障害とともに仕事や家事を行う遂行機能能力低下が初期に気付かれる。進行すると行動の発動の低下、保続や固執、衝動性や脱抑制となり、自己修正も困難となる。病識もなく、にこにこしている場合が多い。最終的に整容、着衣、食事、トイレ、入浴などのセルフケア、言葉の理解や発語もできなくなる。立つ、座る、歩くなどの基本的な運動能力の喪失へと進行し、寝たきり状態となる。末期の低栄養や脱水、誤嚥性肺炎などの感染症など合併症によって死亡する。経過では、MMSE は 3.3〜3.4 点/年ずつ減少し、軽傷例ほど減少速度が遅い。重症度評価法である臨床認知症評価法(Clinical Demantia Rating: CDR)の経過は、1年ごとに、CDR 0.5〜1 の軽度 Alzheimer 型認知症では CDR 0.5 の 69% が CDR 1 に進行し、CDR 1 の 45%、CDR 2 の 33% に CDR の悪化が見られる。それぞれの年率の悪化は CDR sum of boxes では +3.9/+3.8、日常生活動作(activities of daily living: ADL)score は -0.5/-1.3、手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living: IADL)では -1.3/-1.2、Neuropychiatiric inventory(NPI)では +4.2/+3.3 である。平均生存期間はおよそ 10年で、死亡鯨飲の第五位(女性)と第十位(男性)を占めている
およそ 80% に進行ともに行動・心理症状 behavioral and psyochological symptoms of demantia(BPSD)が出現し、家族・介護者の負担となっている。初期の抑うつ、アパシーから易怒性、暴言暴力、焦燥興奮、拒絶、幻覚、せん妄、不眠、徘徊などが見られ、重症では歩行障害、失禁、ミオクローヌスやパーキンソンニズム、けいれんなどが見られる。軽度認知障害から認知症発症までの観察研究である 米国 Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)研究では、記憶障害を有する軽度認知障害(amnestic MCI)から認知症発症は 1年で 60%、2年で 24%、3年で 49% であった
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{{fa>fas fa-shield?24}} 6-2 [[ad_diagnosis|Alzheimer 型認知症の診断基準]]
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