Alzheimer 型認知症の診断に APOE 遺伝子検査は有用か
APOE 遺伝子 ε4 は日本人の Alzheimer 型認知症発症における強力な遺伝子的機器因子で、ε4 アリル・ホモ保有者は ε4 アリル・ヘテロ補修者より発症リスクが高まることが知られている。APOE 遺伝子多型の日常診断におけるルーチン検査は現時点として推奨されない。ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に準拠し、患者への説明と同意の取得、遺伝相談による支援、専門施設での遺伝学的検査が推奨される
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アポリポ蛋白 Apolipoprotein E(APOE)の遺伝多型の ε4 アリルが Alzheimer 型認知症発症の危険因子であり、ε4 アリル数がぞかするにつれて発症率が高まることがしめされた。しかし、ε4/ε4 保有者でも Alzheimer 病を発症しない場合があり、APOE 遺伝子 ε4 は原因遺伝子ではなく、遺伝子的危機因子として理解すべきと考えられる。米国神経学会や欧州神経学会のガイドラインにおいても、APOE 遺伝子多型のルーチン検査は推奨されていない。米国精神医学会による DSM-5 においても、APOE 遺伝子解析検査の有意義性について明らかにされていない。2011年に NIA-AA により改訂された Alzheimer 型認知症の診断基準では、APOE 遺伝子の ε4 の保有は Alzheimer 型認知症の診断として特異性は十分ではないと記載されている。APOE 遺伝子型の開示に関して、APOE 遺伝子 ε4 陰性であると知らされた成人では検査関連のストレスの低下がみられたものの、遺伝子検査を受ける前の心理的ストレスが強い成人では、開示後も心理的ストレスが強い傾向が見られた。APOE 遺伝子型の開示では短期的な重大な心理的リスクにはならなかった
遺伝子検査については、文部科学省、厚生労働省、経済産業省による「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(2014年11月25日一部改正)が公表されており、日本神経学会による「神経疾患の遺伝子診断ガイドライン 2009」も参照されたい