11-1 嗜銀顆粒病の頻度

嗜銀顆粒病 argyrophilic grain disease(AGD)の頻度はどのようなものか

高齢者における AGD の頻度は約 5〜9% と推定され、決してまれな疾患ではない。また、AGD は他の変性疾患に合併することが知られており、特に大脳皮質基底核変性症 corticobasal degeneration(CBD)では高頻度の合併が報告されている

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AGD は、脳内の嗜銀性顆粒状構造物を病理学的特徴とする変性疾患である。嗜銀顆粒は 1987年、Braak らによって始めて報告された。当初認知症者の剖検脳で報告されたため、嗜銀顆粒性認知症(argyrophilic grain dementia あるいは dementia with grains)とも呼ばれるが、認知症を呈さない例もあることから、AGD と称されることが一般的である。AGC の頻度及び認知症との関係についての研究は少ないが、認知症の有無を問わない連続剖検で AGD の頻度は、最も多数例の検討は、26〜96歳の 2,661例を調べた Braak らの報告であり、5%(125/2,661)に AGD が認められ、AGD 148 例中の 32 例(22%)に認知症が見られたとしている。そのほか、Tolnay らは、301例の 65歳を超える連続剖検において、28例(9%)の AGD を見出し、そのうち 14例(50%)に認知症が見られた事を報告した。また、Martinez-Lage と Munoz は 300 例の 30歳を超える対象の連続剖検において、17例(6%)の AGD を見出し、純粋な AGD のうち認知症が見られたのはわずか 2例と報告した(表1)

認知症患者における AGD の頻度は、Braak らは 80例中純粋な AGD は 10例、Itagaki らは 33例中 1例と報告した。Togo らの 304例の認知症者の連続剖検における免疫組織化学と Gallyas 染色を用いた検討では、4.9%に AGD が認められ、これらの平均年齢 81歳であり、全例が 69歳以上であった(表2)。従って、高齢者における AGD の頻度は約 5〜9 %と推定され、決してまれな疾患では無い。また、AGD は Alzheimer 病や Lewy 小体型認知症など他の変性疾患に合併することが知られている。特に進行性核上性麻痺では 19%、大脳皮質基底核変性症では 41%と、高頻度の合併が報告されている。Tatsumi らは大脳皮質基底核変性症においては嗜銀顆粒が 100% に認められることを報告している


認知症疾患診療ガイドライン

嗜銀顆粒性認知症