1-3 認知症と区別すべき病態

認知症と区別すべき病態にはどのようなものがあるか

認知症、特に Alzheimer 型認知症と区別すべき病態には、加齢に伴う正常な認知機能低下(生理的健忘)、せん妄、うつ病、その他の学習障害や精神遅滞がある。


加齢に伴う生理的健忘(表 1)

通常、体験に対する部分的なもの忘れであり、進行しないか、進行がみられても穏やかであること、病識が保たれること、日時の見当識は保たれ、日常生活へ支障をきたすことが少ない点でくべるされる。

せん妄(表 2)

せん妄は、意識障害を伴う急性の精神症状で、注意の集中や維持が困難となる状態である。身体疾患や環境の変化、薬剤による影響などが誘因となることが多い。症状は変動し、持続する認知症とは異なるが、せん妄と認知症は合併して見られることが多い。

うつ病(表 3)

うつ病やうつ状態による偽性認知症は、動作・思考緩慢や集中困難を生じ、記憶力の低下や判断の障害が起こり、自覚症状として記銘力障害を訴え、認知症と間違われることがある。通常、Alzheimer 型認知症のように記憶や遂行機能の障害が永続することはなく、自己の機能障害を過大に評価することが多い(認知症は、病識の低下を反映して、自己の機能障害を過小に評価する)。抗うつ薬に反応する点も鑑別のポイントとなる。

精神遅滞

18歳以前に発症した全般的知的機能障害で、適応機能の障害が共存する。必ずしも記憶障害を伴う必要はない。

統合失調症

多彩な認知機能障害をきたしうるが、認知症と異なり一般的に発症年齢が若く、認知症ほど重篤ではない



認知症疾患診療ガイドライン

認知症