糖尿病のコントロールは認知症予防に有効か
メタアナリシスを含む多くの報告で、糖尿病は Alzheimer 型認知症、血管性認知症、混合型認知症の危険因子であり、特に中年期の血糖管理が認知症予防に必要である
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糖尿病が認知症(Alzheimer 型認知症、血管性認知症、混合型認知症)の危険因子であることは多くの観察研究のメタアナリシスやシステマティックレビューで報告されている
75歳以上の認知機能正常者963人および軽度認知障害302人(健忘型軽度認知障害120人、認知症は無いが他の認知機能障害がある182人)を 9年間追跡した結果、認知症への移行率は糖尿病群で2.87倍、糖尿病予備軍 4.96倍であった
糖尿病による認知障害では、遂行機能、注意など前頭葉機能低下が指摘されている
糖尿病が Alzheimer 型認知症の病態に影響を与えるメカニズムについては、高インスリン血症、インスリン分泌不全など複数の因子による分子細胞生物学的レベルでの相互作用が想定されている。内因性若しくは外因性のインスリンそのものが認知機能に悪影響を及ぼすかどうかについては不明でアル
最近では、肥満、高血糖、高インスリン血症も Alzheimer 型認知症と関連することが報告されている
久山町研究の成績では、糖尿病は Alzheimer 型認知症、血管性認知症の優位な発症リスクであると報告されている。血管性認知症は耐糖能異常のレベルから発症率が高く、Alzheimer 型認知症の発症率は糖尿病レベルで優位に上昇していた(ハザード比 2.1)。また、糖負荷後 2時間血糖レベルの上昇に伴い、Alzheimer 型認知症および血管性認知症の発症リスクは直線的に増加していた
1型糖尿病患者において低血糖が鎮知己能低下との関連が指摘されているが、長期的な疫学調査では慢性的な高血糖と微小血管障害が糖尿病関連認知症と関連があったとされている。同様に 2型糖尿病患者でも、慢性的な高血糖と長期の糖尿病歴は認知機能低下の進展に関連があったとされる
治療介入として厳格な血糖管理はすべての血管イベントの抑制という面で重要であるが、2型糖尿病患者において厳格な血糖管理の有効性ははっきりしていない。糖尿病と共に高血圧、脂質の管理を行う事で血管イベントを低下させることが出来、血管性認知症に関して認知機能低下を改善するという報告がある