認知症の診断に有用な遺伝子検査はあるか
Mendel 遺伝形式をとる遺伝性認知症の原因遺伝子が同定されており、遺伝子変異を同定することで診断を確定することが可能である
遺伝子診断は、被検者の同意が原則であり、強制すべきではない。必要に応じて遺伝カウンセリングを提供する
APOE 多型は Alzheimer 型認知症の遺伝子であり、Alzhiemer 型認知症者では APOE ε4 保因者の比率が有意に高い。
APOE 多型を Alzheimer 型認知症の補助診断として実施することは勧められない
Mendel 型遺伝形式を呈する家族性認知症の原因遺伝子を 表1 に示した。原因遺伝子に病的変異が同定された場合、診断は確定される
家族性 Alzhiemer 病の原因遺伝子として APP、PSEN1、PSEN2 が知られており、わが国でも 100例以上の症例が報告されている
遺伝子変異を有する家族性 Alzheimer 病は 40~50 歳代に発症することが多い(図1)
家族性 Lewy 小体型認知症の原因遺伝子としては SNCA のミスセンス変異、及び重複変異がある
前頭葉側頭葉変性症 frontotemporal lobar degeneration(FTLD)の原因遺伝子は複数報告されており、遺伝子診断アルゴリズムが提唱されている(図2)
わが国の遺伝性 FTLD では MAPT 変異が多く、GRN 変異はまれである
疾患の罹患しやすさを規定する感受性遺伝子としては、Alzhemimer 型認知症の APOE 多型がある
Alzheimer 型認知症患者では APOE ε4 が陽性である。Alzheimer 型認知症の補助診断として APOE 多型を検査することは推奨されない
大規模 Alzheimer 型認知症サンプルを用いたゲノムワイド関連解析が行われ、19個の有意な感受性遺伝子が報告されたが、それぞれのオッズ比は高くない
遺伝子診断は被検者の同意が原則であり、強要すべきではない
遺伝子診断により遺伝的疾患が確定されるという心理的負担や、同一家系の家系員への影響は配慮されるべきである。必要に応じて遺伝カウンセリングの機会を提供することを考慮する