透析・歯科治療など侵襲的な検査・治療はどのように判断するか
認知症者が透析を行う場合、日本透析医学会から提案されている「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」を参考にする。認知症者に歯科治療・口腔ケアは必須であり、予防的・継続的に口腔衛生管理を提供することを推奨する。
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2010年末、透析人口全体のうち 9.9%(全透析患者から不明・記載なしを除いた 23.4万人のうち 2.3万人)が認知症を合併している。90歳以上に至っては、25~35% がサポートを必要とする認知症を合併している。透析を必要とする認知症者の増加と共に、透析中の立ち上がりや不穏など安全に行えない状態が増えてきている。沈静や介護者の付添にも限界がある。
「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」は、患者への適切な情報艇庫湯と患者が自己決定を行う際の支援・同意書取得のための提言である。維持血液透析を開始する際、事前指示書で重篤な脳機能障害、余命の短い状態などの状況下で透析見合わせを希望するかなど、意志表示を書面で残す権利がある。透析の見合わせを検討する状況の中に、認知症者に起こり得る「抑制及び薬物による鎮静をしなければ、安全に体外循環を実施できない」や「経口摂取不能」も含まれている。維持血液透析を見合わせる意志決定プロセスのフローチャートも載せている。
歯科治療に関しては、2015年に日本老年歯科医学会ホームページで「認知症患者の歯科的対応及び歯科治療のあり方:学会の立場表明 2015.6.22 版」が公開された。
認知症発症により、自発的な清潔行動が障害される事から、口腔衛生状態は悪化し、健常者より齲歯が多く、また、歯周病も多い。誤嚥性肺炎予防として口腔ケアが重要であることは言うまでも無い。認知症を発症して歯科治療が途絶えてしまう、介入の意味を理解出来ず拒否を示す事で治療が出来なくなるケースも経験する。炎症のコントロールが出来ない、緊急的な対応しか出来ない、全身麻酔科で治療せざるを得ないこともある。そのように悪化する前に、予防的に口腔衛生管理を継続的に認知症者に提供することを推奨している。
認知症者の自己決定権、代諾者の問題については、日本老年医学会のガイドラインが参考になる。