4B-1 軽度認知障害

軽度認知障害 mild cogunitive impairment(MCI)の有病率および罹患率はどのようなものか

研究ごとに異なるが、MCI の有病率は 65歳以上の高齢者で 15〜25%、罹患率は20〜50 / 1000人/年程度と推定される

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1. 有病率

CQ4B-5 に詳述するが、MCI の元来の診断基準は Petersen によって確立されたものが当初広く使われたが、各疫学研究に於ける軽度認知障害の診断の基準はそれに若干の修正や変更が加えられている場合は、Diagonostic and Statistical Mnual of Mental Disorders(DSM-ⅢR、DSM-Ⅳ、DSM-5)などさまざまな基準も用いられており、それが有病率や罹患率に大きな影響を与えていることがまずは想定される。特に、軽度認知障害のうち記憶の要害に限った健忘型軽度認知障害についての疫学データが多いため、若干混乱があることに留意が必要である。また、各疫学研究においては対象の組み入れが地域密着型研究なのか、集団ベース研究なのかでも有病率は異なるうえ、調査の対象年齢の幅や高低によっても数字の幅が大きいことも言うまでもない

それらの要素を考慮せずに純粋にデータのみを俯瞰すると、有病率では 65歳以上では少ない報告でも 5% 程度、多い者では 42% という統計となる。もっとも、この 42% というフランスの報告は突出しており、それを除けば概ね 15〜25% 程度というのが多く見られる統計となっている。健忘型軽度認知障害に限った場合は、有病率は 65歳以上で 2.4〜28.3% という幅の報告がある

2. 罹患率

一方罹患率であるがこれもコホートの参加年齢が研究毎に異なるためか、1000人あたり 8.5〜76.8 人/年と幅があるが、おおむねは 20〜50 / 1000人/年という数字に落ち着くようである。一方、健忘型軽度認知障害に限った罹患率は 9.9〜40.6 / 1000人/年と報告されている。

概して、最近の報告のほうが有病率が高く報告されていることが多い事は興味深い点である


認知症疾患診療ガイドライン

経過と治療