介護保険制度の認知症者、介護者への役割は何か
介護保険は認知症者と家族の暮らしを支える生活支援を基盤として、地域包括支援センターを中心とする相談支援サービス、訪問介護、訪問入浴、訪問看護といった訪問サービス、デイサービスや通所リハビリテーションと言った通所サービス、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)や小規模多機能型居宅介護をはじめとする地域密着型サービスと多様なサービスを提供している
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介護保険制度は、1997年に成立した介護保険法に基づき、2000年からスタートした 5番目の社会保険制度である。被保険者は満40歳以上(満65歳以上: 第一号被保険者、満40〜64歳: 第二号被保険者)、保険者は市区町村である。被保険者は、「介護が必要な状態にあるかどうか」の審査・判定を経て、要介護者または要支援者と認定された場合に、保険給付(サービス利用)を受ける事ができる。審査・判定のプロセスを要介護認定と言い、① 被保険者が保険者に申請、② 身体状体に関する調査(コンピュータによる一次判定)、③ 主治医による医学的観点からの意見書(② と併せて行う合議の二次判定)などで行われる。認定は軽い方から、要支援 1〜2、要介護 1〜5 までの 7段階あり、要支援の場合は介護予防サービス、要介護の場合は介護サービスを利用することができる
介護保険で利用できるサービスは、大きく ① 居宅サービス: 在宅で 11 種類のサービスを組み合わせて利用(訪問介護や通所リハビリなど)、② 施設サービス: 表1 に示した 3種類のいずかの施設への入所がある。なお介護療養型医療施設に関しては、2017年度末までに医療病床か介護施設へ転換が検討されている。このほか、2006年度から複数の居宅サービスをパッケージで利用する ③ 地域密着型サービスが加わり、20 種類以上のサービスが提供されている。① 居宅サービスと ③ 地域密着型サービスでは、一部を除いて 1ヶ月ごとのサービス利用計画(ケアプラン)に基づいてサービスを利用する。ケアプランは介護支援専門員(ケアマネージャー)作成する事が基本であり、原則として、要介護度ごとに決められた 1ヶ月あたりの支給限度額(利用上限)の範囲内でサービスを組み合わせて作成される。これらのサービスの有用性がすべて検証されているわけではないが、認知症対応型通所サービスである珍致傷対応型通所介護を利用することによって、行動・心理症状の消失ないし軽減がみられたという報告がある
介護保険制度は、3年単位で保険者が策定する事業計画に基づいて運営され、保険料や介護報酬(サービス単価)も 3年ごとに改定される。また、必要に応じて、法改正を伴った制度改正も行われる。2015年度には、前年の医療介護総合確保推進法(税・社会保障一体改革)を受けた制度改正と、通常の 3年ごとの報酬改定が行われた
要介護高齢者の増加が見込まれるなか、給付を出来るだけ押さえることを目的に、① 地域包括ケアシステムの充実、② 保険給付の中重度者への重点化・予防給付の再編、③ 利用者負担の引き上げなどが行われた。また、認知症高齢者の増加に伴って、認知症対応サービスの拡充や早期発見・対応に向けた仕組み作りなどが進められている