軽度認知障害 mild cogunitive impairment(MCI)のコンバート予測に有用なバイオマーカーは何か
脳脊髄液の Aβ42、リン酸化タウ、総タウの異常値、APOE 遺伝子のε4 多形型の存在、アミロイド PET、FDG-PET での異常所見は、軽度認知障害から認知症へのコンバート予測に有用であるとされている
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軽度認知障害から認知症へコンバートする危険因子については、ほとんどの研究が Alzheimer 病を対象としている。そして、近年の研究により、軽度認知障害から認知症へとコンバートしやすい病理背景としては Alzheimer 病が最多である。Alzheimer 病は軽度認知障害の段階に至った状態(MCI due to Alzheimer disease)では Aβ およびリン酸化タウの脳内蓄積が完成しつつある段階であるため、バイオマーカー上 Alzheimer 病のパターンを示す者がコンバートしやすいということになる
10 の研究を解析したメタアナリシスにおいて、脳脊髄液中の Aβ42 の異常値は感度 79%、特異度 72% で、総タウの異常値は感度 72%、リン酸化タウの異常値は感度 84%、特異度 93%、で、Aβ42 / リン酸化タウの異常値は感度 85%、特異度 79% でコンバートを予測した。特にリン酸化タウの異常値は 24ヶ月以内のコンバートをよく予測した。ただし、これらの測定値は検査方法(ELISA もしくは X-MAP)によって正常カットオフ値が異なる点、また、検査施設毎にも正常カットオフ値が異なる点に注意が必要である
8 つの研究のメタアナリシスからは 、APOE 遺伝子の ε4 多形保持者が双胎リスク 2.09 でコンバートしやすかったことが示されている
タンパク質、micro RNA など様々な血液バイオマーカーの研究が発表されているが、複数の研究で再現性を持って評価に耐えるバイオマーカーは存在しなかった
米国 Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)研究からのデータが、最も被検者数が多い一貫したデータとなっている。容積 MRI の解析は、特に海馬のように非常に小さい領域の解析は自動化が難しく、また手動の場合は segmentation に大きな検査者間の差が生じることが問題である。また、画像解析にどのようなソフトウェア(主にしようされるのは FreeSurfer もしくは SPM(バージョンがさまざまにある))を使用するかによっても結果が異なる点において注意が必要である。そのうえで、コホート研究において開始時に海馬、扁桃体、嗅内野、容積がコンバートしなかった群と比べて小さいこと、もしくは経時的に撮像された画像において年間の海馬、嗅内野、側頭葉皮質容積の萎縮率が高い方がコンバートしやすいとされるが、どの部位の大きさ、もしくは萎縮率が最も良くコンバートを予測するかについての結論は出ていない。拡散強調画像、function MRI の有用性についてはさまざまな報告があるが、コンセンサスの得られたものはない
14 の研究を解析したメタアナリシスでは、FDG-PET のコンバートに対する感度は 76%、特異度は 82% であった。しかし、この場合、それぞれの研究において FDG-PET の「陽性」「陰性」の基準が異なる点には注意が必要である。通常「陽性」の基準としては、頭頂側頭葉等の代謝低下を視覚的ん判定する Silveman らの基準が使われることが多い
C-PIB-PET による 11 の研究を解析したメタアナリシスでは、コンバート予測の感度は 96%、特異度は 58% であった。F リガンド製剤を含むメタアナリシスはなかった。アミロイド PET の陽性、陰性には熟練した放射線科医が視覚的に判定する方法、対小脳比の取り込み比(SUVR)で判定する方法などがあり、研究毎に陽性の基準が異なる点に注意が必要である
SPECT はわが国においては頻用されている検査ではあるが国際的にはあまり施行されていない。8つの研究を対象に行われたメタアナリシスでは、感度は 83.8%、特異度は 70.4% とされた。ただし、それぞれの研究に使われた核種が異なる点、また判定の基準が異なる点には注意が必要である