4B-4 軽度認知障害の評価尺度

軽度認知障害 mild cogunitive impairment(MCI)を疑う場合にはどのような評価尺度が推奨されるか

軽度認知障害を検出するためには Mini Mental State Examination(MMSE)では十分でないため、Montreal Cognitive Assessment-Japanese Version(MoCA-J)が推奨される。MMSE 単独では無く、文章の記憶などやや複雑な記憶検査を加えると健忘型軽度認知障害をより診断しやすい

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MMSE は最も広く使われている認知症のスクリーニングテストであるが、軽度認知障害(MCI)を検出するには感度、特異度とも十分ではなく、限定的な役割しか無い。MoCA-J は、記憶としては 5 単語の早期を行うため MMSE より記憶の負荷が高く、また前頭葉機能の検査も含んでいるため、MCI の診断に用いられる。MMSE で 26点以上の軽度認知障害において、MoCA-J で 30点満点中 26点をカットオフとすると、英語版で感度95%、特異度 50%、日本語版で感度 93%、特異度 87% であった

Addenbrooke's Congnitive Examination-Revised(ACE-R)は MMSE に、前向性 / 逆行性記憶、語列挙、視空間認知機能などの検査が加わったもので、施行時間は約15分と長めだが、カットオフ値 88/100 にした場合、感度 94%、特異度 89% となり、MMSE より良好となる。英語版は現在第三版に移行したが、日本語では第三版はまだ作られていない

欧米では種々の比較的短時間で施行可能な記憶検査が健忘型 MCI の検出に有効であることが示されているが、わが国で標準化されているものはない。必要に応じてウェクスラー記憶検査 Wechsler Memory Scale-Revised(WMS-R)や Rey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)など、詳細な記憶検査を追加して施行する。被健忘型 MCI を検出するための特異的な検査はないが、視空間認知機能、遂行機能などに関する検査を加えることにより、診断しやすくなる。時計描画検査は広く使われている検査であるが、感度 58.2% 、特異度 57.5% と MCI の鑑別には適さないとの報告がある

質問紙票や介護者からの聞き取りによる評価としては、道具を使用する日常生活動作に関する質問紙票や Clinical Dementia Rating(CDR)総得点が軽度認知障害の診断に有効であるとする報告がある。CDR 0.5 は認知症の疑いとされるが、これを便宜的に軽度認知障害としている研究も散見される。介護者からの情報が十分得られない場合や、評価者の訓練が十分でない場合には評価者間の一致度が十分で無い事があり、注意が必要である。また、1年前に比べた認知活動の変化を本人及び家族に問う Cognitive Function Instrument(CFI)が、発症前の Alzheimer 型認知症の評価に有用であると報告されているが、日本語版は作成されていない


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