認知症の危険因子・防御因子にはどのようなものがあるか
認知症の危険因子として、加齢、遺伝的危険因子(APP、PS1、PS2,APOEε4)、血管性危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症)、生活習慣関連因子(喫煙など)、関連する疾患(メタボリック症候群、睡眠時無呼吸症候群、うつ病と双極性障害)などがある。防御因子としては、適度な運動、食事因子、余暇活動、社会的参加、精神活動、認知訓練などがあげられている。後天的な要素としては、教育歴、頭部外傷などが含まれる
認知症予防のために修正可能な危険因子として、(中年期)高血圧、糖尿場用、(中年期)肥満、脂質異常症、身体活動、うつ病があげられる
高血圧の認知症・認知機能低下に対する影響は年齢によって異なる。中年期の高血圧は高齢期の認知症や認知機能滴下の危険因子であるため。認知症予防の観点から積極的な治療が推奨される
糖尿病は認知症(Alzheimer 型認知症、血管性認知症、混合型認知症)の危険因子であり、特に中年期の血糖管理が認知症予防に必要である
中年期の脂質異常症、特に高コレステロール血症は Alzheimer 型認知症の危険因子であることが示されており、中年期の脂質異常に対して厳格なコントロールが望ましい。高齢者では血清コレステロール値が高いほど Alzheimer 型認知症になりにくいという報告もあり、高齢者へのスタチン投与は慎重を要する
メタボリック症候群と、加齢に伴う認知機能低下や軽度認知障害および血管性認知症との関連を示唆する報告は増えているが、Alzheimer 型認知症との関連は一致していない。特に中年期のメタボリック症候群が認知機能低下と関連があるという報告が多い
喫煙は認知症(risk ratio : RR 1.30)、血管性認知症(RR : 1.38)、Alzheimer 型認知症(RR : 1.40)を悪化させる
運動療法については多くの観察研究により、定期的な身体活動は認知症や Alzheimer 型認知症の発症を抑制すると報告されている。高齢者に対する身体活動の介入試験では認知機能低下を抑制したという報告があり、運動を積極的に取り入れることが推奨される
複数の観察研究において、うつ病や双極性障害の既往は高齢期に於ける認知症発症のリスクを高めることが報告されている
余暇活動には知的要素(ゲーム、囲碁、麻雀、映画・演劇鑑賞など)、身体的要素(スポーツ、散歩、エアロビクスなど)、社会的要素(友達に会う、ボランティア活動、旅行など)が含まれ、余暇活動は認知症や Alzheimer 型認知症発症の抑制効果があるという報告が多い。認知訓練は認知機能低下予防に効果があるという報告と、有意な差がないという報告がある
炭水化物を主とする高カロリー食や低タンパク食および低脂肪食は、軽度認知障害や認知症のリスクを高める傾向にある。適度の飲酒は認知症を予防することが報告されている。特に赤ワインの適量飲酒は認知機能低下に対して予防的効果を持つと報告されている。“適度な飲酒量” は人種差、個人差があるので注意が必要である。高ホモシステイン血症は、Alzheimer 型認知症や他の認知症の危険因子であることが報告されている。魚には n-3 fatty acid が含まれており、魚の摂取量が多いと Alzheimer 型認知症や認知症のリスクが低下する。多くの観察研究において、睡眠時無呼吸症候群および睡眠時呼吸障害が血管性危険因子であると共に認知機能低下に影響を与えることが示されている
教育歴が短いと Alzheimer 型認知症のリスクが高くなる
頭部外傷は、男性ではAlzheimer 型認知症の病理学的診断のオッズ比が増加する(OR 1.47)が、女性では増加しない(OR 1.18)