Lewy 小体型認知症 dementia With Lewy bodies(DLB)の検査・画像所見の特徴は何か
DLB では ドパミントランスポーターシンチグラフィ、metaiodobenzylguanidine(MIBG)心筋シンチグラフィでの取り込み低下が特徴で木である。CT/MRI では内側側頭葉が比較的保たれる。また脳血流 SPCT/FDG-PET で後頭葉の血流・脳代謝の低下が見られる
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DLB では I-MIBG 心筋シンチグラフィやドパミントランスポーターシンチグラフィ(イオフルパン SPECT)にて取り込み低下が見られる。前者は 2012年3月 厚生労働省医療課長通知により、PD または DLB の診断のための使用を保険審査上認められ、後者は 2014年より DLB 診断のための保険適用検査となっている。とりわけ I-MIBG 心筋シンチグラフィでは他の変性疾患に伴うパーキンソニズムを呈する疾患(多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症など)との鑑別に有用であり、ドパミントランスポーターシンチグラフィは Alzheimer 病との鑑別において有用性が高い。I-MIBG 心筋シンチグラフィとドパミントランスポーターシンチグラフィを組み合わせると、DLB と Alzheimer 型認知症は感度 96.1%、特異度 90.7% で鑑別出来るという報告もある。また、臨床上重要となる DLB と非 DLB 型認知症の鑑別診断脳については、I-MIBG 心筋シンチグラフィで感度 93%、特異度 100%、陽性的中立 100%、陰性的中立 98%、ドパミントランスポーターシンチグラフィで感度 90%、特異度 76%、陽性的中立 49%、陰性的中立 97% とされている
ドパミントランスポーターシンチグラフィを診断に応用するには、以下の点に注意する
① DLB と他のパーキンソニズム(進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症など)との鑑別は、両者共にシナプス前障害を有するために鑑別は困難である
② 血管性パーキンソン症候群では正常から軽度脱落、薬剤性パーキンソン症候群では正常を示すが、服用している薬剤を知っておく必要がある
③ 三環系抗うつ剤や選択的セロトニン再取り込み阻害薬 selective serotonn reuptake inhibitor(SSIR)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 serotonin-norepinephrine reuptake inhibitor(SNRI)、その他(コカイン、アンフェタミン、リタリン、モディオダールなど覚醒作用のある薬剤)などはドパミントランスポーターやセロトニントランスポータへの作用機序を有する薬剤との相互作用はイメージング結果に影響を及ぼすため、休薬や代替薬の使用を考慮すべきである。コリンエステラーゼ阻害薬、レボドパや MAOB 阻害薬などの抗 Parkinson 病薬については検査結果にあまり影響しない
④ 妊婦や脳イメージングに不同意の者、コカインなどの興奮性物質に対する過敏性がある者は全面的禁忌である。イオフルパンが母乳に排出されるかは明確では無いが、授乳は相対的に禁忌である
⑤ 肝機能障害、アルコール過敏、排尿障害、アレルギー体質の患者には同意を得た上で慎重に投与する
頭部 MRI では海馬、海馬傍回は比較的保たれるが、脳幹部の萎縮について脳容積計測 Voxel-Based Specific Regional Analysis System for Alzheimer's Disease(VSRAD)などの統計解析で診断できる場合もある。脳血流シンチグラフィでは Alzheimer 型認知症でも DLB でも後頭葉、後頭帯状回、楔前部の血流低下がみられ、両者の鑑別はしばしば困難であるが、Alzheimer 型認知症では海馬の血流が低下するのに対して DLB では比較的保たれ、DLB では Alzheimer 型認知症に比較して一次視覚野の血流、代謝の低下が早期から見られることも特徴である。25例の probable DLB 患者を対象とした脳血流シンチグラフィの解析では 68% に後頭葉血流低下をきたしたとする報告がある。脳血流シンチグラフィで DLB の診断が難しい場合は MIBG 心筋シンチグラフィと組み合わせると診断制度がますことも報告されている
以上のことから、DLB においては MIBG 心筋シンチグラフィ、ドパミントランスポーターシンチグラフィ、MRI の VSRAD、脳血流シンチグラフィ検査にてそれぞれ特徴的な以上が見られるが、単一の検査で診断が難しい場合は複数の検査を組み合わせることで診断制度がますことが期待される
さらに、アミロイド PET 検査にて DLB では Alzheimer 型認知症と同様に取り込み上昇がみられ、コリンエステラーゼ(ChE-PET)では後頭葉を中心に ChE の取り込みが低下する事が知られている
また、脳脊髄液のバイオマーカーでは Parkinson 病と同様に DLB で α シヌクレイン値が低いとする報告が多いが、有用性は現時点で確立していない。リン酸化 α シヌクレインや α シヌクレインオリゴマーが DLB の脳脊髄中でパーキンソン病と同様高いとする報告がある。また DLB ではコントロールに比較して脳脊髄液の Aβ42 値が低い例が報告されている
2016年12月に米国フロリダにて DLB の国際会議が開催され、2017年6月に DLB の新診断基準が発表された。そのなかで示唆的バイオマーカーとして 1)ドパミントランスポーターシンチグラフィによる基底核での取り込み低下、2)MIGB 心筋シンチグラフィによる取り込み低下、3)睡眠ポリグラフ polysomnography(PSG)による、筋緊張低下を伴わないレム期睡眠 REM sleep without atonia(RWA)の確認が加えられた。とくにレム期睡眠時の筋緊張以上はレビー小体病理に異常に特異性が高く、レム期睡眠行動異常症 REM sleep behavior disorder(RBD)の既往のある認知症患者の 90% 以上はシヌクレイノパチーである可能性があり、その他のバイオマーカーが陰性であっても重要な徴候と認定された