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dementia:14-1

14-1 血管性認知症の診断基準

血管性認知症 vascular dementia(VaD)の診断基準はどのようなものか

代表的な VaD の診断基準には、世界保健機構(WHO)の国際疾病分類第10版(ICD-10)、米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル改訂第五版(DSM-5)、カルフォルニアの Alzheimer 病診断・治療センター Alzheimer's disease diagonostic and treatment center1(ADDTC)による虚血性血管性認知症の診断基準、米国国立神経疾患・脳卒中研究所 National Institute of Neurological Disorders and Stroke(NINDS)と Association International pour Ia Recherche et I'Enseignement en Neurosciences(AIREN)診断基準(NINDS-AIREN)がある

米国心臓協会/米国脳卒中協会 American Heart Association / Amerian Stroke Association(AHA/ASA)の包括的ステートメントでは、VaD の前駆段階を血管性軽度認知障害 mild vascular cognitive disorder(mild VCD)、前駆段階を過ぎた状態が血管性認知異常症 major VCD となっている

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VaD は脳血管障害が原因となる認知症であり、その病態には異質なものを含んでいる。Hachinski の虚血スコア、およびその修正版は VaD の診断に広く用いられているが、本来は Alzheimer 型認知症との観月を目的とするものであり、厳密な意味での診断基準ではない。研究用に作成された NINDS-AIREN 診断基準は特異度が高く、臨床的にも汎用されているが感度が低いという欠点がある

2011年、AHA/ASA は治療優先の観点から、血管性認知障害 vascular cognitive impairment(VCI)の包括的名称を提唱している。VCI は VaD、および VCI-no dementia または VaMCI を含んでいる(表1)。また、Alzheimer 型認知症が高頻度に合併し、いずれの疾患も血管因子が危険因子となることから、両病態の相互作用や血管因子への介入による治療の可能性を指摘している。VCI は広義には前駆期のみならず認知症期も含んでいるが、VCIーno dementia として前駆期を意味する場合があり、注意が必要である。このため 2013年、Vascular Behavioral and Cognitive Disorders(VASCOG)国際学会は、全病期を含む用語として血管性認知異常症 vascular cognitive disorders(VCD)を提唱した。VCD は血管性経度認知異常症(mild VDC)、および血管性認知異常症(major VCD、すなわち VaD)を含み、Alzheimer 型認知症と高頻度に併存する事を協調している

一方、2013年に発表された Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5(DSM-5)では認知症(DSM-5)は major neurocognitive disorder として位置づけレ、その中でも VaD は major vascular neurocognitive disorder として扱われている


認知症疾患診療ガイドライン

血管性認知症

dementia/14-1.txt · 最終更新: by nonbe