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dementia:14-4

14-4 血管性認知症と Alzheimer 型認知症の合併

血管性認知症 vascular dementia(VaD)と Alzheimer 型認知症の合併はどのようなものか

Alzheimer 型認知症と脳血管障害は共通の危険因子を持つことから合併しやすく、脳血管障害 cerebrovascular disorder(CBD) を有する Alzheimer 病(AD with CVD)または混合型認知症 mixed dementia という概念がある。進行期の Alzheimer 型認知症では脳血管障害の認知機能に対する影響は少ないが、初期の Alzheimer 型認知症では認知機能障害の促進因子として作用する

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Alzheimer 型認知症と VaD が合併する混合型認知症の割合は加齢で増加するが、認知症全体に占める割合については病理報告であっても 0〜55% と大きな開きがある。一般的には脳血管障害と Alzheimer 病理が併存し、おのおのが単独でも認知症を発症しうる程度のものを混合型認知症としているが、単に両疾患が併存するもの(AD with CVD)を含める立場もあり、頻度のばらつきの原因となっている。狭義の混合型認知症の肥土は、jellinger による 1,100 例の連続剖検例のレビューでは、混型認知症は 4.8% であり AD with CVD は 25.7% と報告されている。久山町研究でも AD + VaD は 4.7% となっており、狭義の混合型認知症の割合は 5% 前後と考えられる。脳血管障害は認知症の発症に促進的に作用するとする複数の報告がある

Nun Study は米国の 76〜100歳 の修道女を対象として、生前の認知機能と剖検所見を前向きに比較した研究である。本研究において病理学的に Alzheimer 型認知症と診断された症例のうち、梗塞巣を有しない群では Mini-Mental State Examination(MMSE)の平均得点が 15点 であったのに対し、梗塞巣を有する群では 3点 と有意に低かったことから、高齢者における Alzheimer 型認知症の臨床像には脳梗塞が関与することが示唆されている。日系米国人男性を対象とした前向き疫学研究では、病理学所見で老人斑や神経原線維変化に脳血管障害が共存すると、認知症の出現率が 2倍 以上に増加し、脳梗塞は認知症の発症に対して独立した予測因子となっている。5,715名の患者剖検脳のデータベースから脳血管障害の頻度を調べた研究では、Alzheimer 型認知症との合併は、α シヌクレイノパチー、前頭側頭葉変性症、プリオン病などの他の神経変性疾患よりも高率であり、その傾向は若年者で特に顕著であった。

Alzheimer 型認知症、脳血管障害、Lewy 小体病と診断される病理変化を複数有する場合には、1つの場合に比べて認知症を呈する比率が 2.8倍 高率であった。脳血管障害の認知機能に対する影響は進行期の Alzheimer 型認知症では極めて少ないが、初期の Alzheimer 型認知症では認知機能障害の促進因子として作用することが示されている


認知症疾患診療ガイドライン

血管性認知症

dementia/14-4.txt · 最終更新: by nonbe