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dementia:16-1

16-1 ビタミン欠乏症

16-1 ビタミン欠乏症による認知機能低下の特徴は何か

ビタミン $B_1$ 欠乏症は急性の代謝脳症である Werinike 脳症を発症し、意識障害、眼球運動障害、運動失調を主徴とする。Wernike 脳症は治療が奏功しなければ不可逆性の Korsakoff 症候群に移行し、失見当識、健忘、作話、病識欠如などの症状を呈する

ビタミン $B_{12}$ 欠乏症では記憶障害や精神症状をきたし、葉酸欠乏症についても、ビタミン $B_{12}$ と同様の認識脳障害を呈するといわれている。近年、ビタミン D 欠乏症についても、認知機能障害をきたす可能性が示唆されている


ビタミン $B_1$ 欠乏症は、アルコール症や偏食で散見され、進行すると意識障害、眼球運動障害、歩行失調を三主徴とする Wernike 脳症を発症する。しかし、この三主徴をすべて見たスレイは少なく、Caine らは、① 栄養失調、② 眼球症状、③ 小脳失調、④ 意識障害あるいは認知機能のうち 2つだけ満たせば Wernike 脳症と診断されるという基準を提唱した。そのhか、せん妄、脱力感、アパシー、目の前の状況に対する認識の障害、集中力の障害を認める事があり、昏睡をきたし死に至るかの失せもある。Wernike 脳症は 85% が Korsakoff 症候群に移行するといわれ、近時記憶のより強い障害、全向性健忘、作話を認める。意味記憶障害の提訴は差があり、手続き記憶は保持されることが多い

ビタミン $B_6$ は、食品に多く含まれるため欠乏することは少ないとされるが、アルコール症、吸収障害を伴う腸疾患、ピリドキシン不活性化薬剤(イソニアジド、サイクロセリンなど)の服用などにより欠乏症をきたし、貧血、末梢神経障害、けいれん発作ののほかペラグラ様症状(後述)を生じることがある

ビタミン $B_{12}$ 欠乏症や葉酸欠乏症は、アルコール症や偏食のほか、吸収障害を伴う腸疾患に認められ、抗ホモシステイン血症を介して認知機能低下を来すとされる

ビタミン $B_{12}$ 欠乏症では、貧血や大赤血球症を伴わずとも、思考緩慢、記憶障害、注意障害などの認知機能障害、抑うつ症状、妄想、幻覚、思路障害、せん妄などの精神症状、運動、感覚、自律神経障害などの神経症状を認める。一部、躁との関連についても報告されている

葉酸欠乏症の精神神経症状は、Shorvon らによるとビタミン $B_{12}$ 欠乏症の場合と共通しているが、気分障害の頻度はビタミン $B_{12}$ 欠乏症の約 2倍であると報告され、血中葉酸値の低下が認知機能低下と関連しているとも報告されているが、見解は一定していない

ナイアシン(ニコチン酸、ニコチンアミド)欠乏症は、古くからペラグラ(4D: 皮膚炎 dermatis, 下痢 diarrhea, 認知症 dementia, 死 deth)として知られているが、診断上皮膚所見が需要である

近年、ビタミン D 欠乏症は高齢者に少なくないとされ、認知機能の関連について報告したメタアナリシスが存在するが、記憶障害や遂行障害のリスクと関連があるとする報告があるが、一定の見解はまだない


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dementia/16-1.txt · 最終更新: by nonbe