向精神薬による治療の有害事象(転倒、日常生活動作 zctivity of daily living(ADL)低下、認知機能低下、誤嚥性肺炎など)には何があるか

向精神薬の有害事象には過鎮静、低血圧、転倒、嚥下障害、便秘、悪性症候群がある。死亡リスク上昇とも関連する。オランザピンとクエチアピンは耐糖能異常に特に注意を払う。抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み阻害薬 selective serotonin reuptake inhibitor(SSRI)やセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬 serotonin-norepinephrine reuptake inhibitor(SNRI)では悪心、軟便、セロトニン症候群を、ベンゾジアゼピン系抗不安薬や睡眠導入薬では転倒、誤嚥、傾眠、呼吸抑制を生じうる。

A


有害事象は各薬剤のてんっぷぶんびょに記されているが、そこに記載された頻度は必ずしも認知症高齢者に対して用いられた場合のものでは無いことに注意する。認知症高齢者では歩行障害も判断力も低下した有害事象の出現しやすい状況で投薬が行われる。抗精神病薬の有害事象は過鎮静、転倒、骨折、嚥下障害、便秘、尿路感染、脳血管障害、心血管系イベント、静脈血栓症、浮腫、歩行障害や、悪性症候群、死亡リスク上昇などである。過鎮静は眠気の増強以外に、それまで認められていなかった失禁や良弁が出現するといった認知機能低下による生活障害として気づかれることも多い。転倒は脱力、固縮、動作の緩慢化、姿勢反射傷害、注意力低下など複合的な影響を介して出現し、頭部外傷、硬膜下血腫、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、骨折を伴いうる。嚥下障害は誤嚥性肺炎を引き起こす。

オランザピンとクエチアピンは糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者は禁忌であり、リスペリドンとアリピプラゾール\では、血糖の観察と、副作用種源氏の対処法を患者に説明する必要性などについて警告が出されている。

抗うつ薬の SSRI や SNRI は悪心や軟便と言った消化器症状やセロトニン症候群(振戦、発汗、頻脈、不安、焦燥等)を生じうる。抗不安薬や睡眠導入薬では種にベンゾジアゼピン系薬剤について、脱力、転倒、誤嚥、嚥下障害、傾眠、呼吸抑制などを生じうる。

他の定型抗精神病薬や三環系抗うつ薬といった向精神薬の有害事象については、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」を参照されたい。


認知症疾患診療ガイドライン

治療