アパシーに有効な非薬物療法・薬物療法は何か

アパシーに対する非薬物療法としては、個々の認知症者に合わせた治療的なアクティビティの有効性が示唆されている。わが国於いては介護サービスのプログラムとして受けるのが現実的な対応だと思われる。薬物療法としては、適応疾患に対してはコリンエステラーゼ阻害薬が第一選択薬になる。そのほか、メマンチンも考慮して良いが、抗うつ薬、抗てんかん薬の効果は認められていない

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アパシーは、自発性、発動性、興味、関心、動機付け、感情などが低下した状態のことで、認知症の原因となる疾患のほとんど全てで最も高頻度に認められる。認知症の行動・心理症状 behavioral and Psychological symptoms of dementia(BPSD)である。妄想や易怒性のような陽性症状では無いため、介護負担は少ないと誤解されがちであるが、日常生活の中で行うべき行動を行わなくなったり、周囲の人の働きかけに反応しなくなったりするため、治療の対象となる症状である

認知症者のアパシーに対する非薬物療法の効果を検証するために、56の研究に対して行われたシステマティックレビューが報告されている。このレビューでは、治療的なアクティビティに対して質の高い研究が複数あり、特に個々人に合わせて構築されたアクティビティがアパシーの軽減に期待出来るとしている。具体的には、参加者主導の双方向のディすっかっしょん、作業療法士が家族介護者を指導しながら、個々の認知症者に合ったパズル、サラダを作る、ビーズの分類、木工作業、キャッ史ボール、ビデオや音楽鑑賞などを行う等の活動などが報告されている。わが国於いては、介護サービスのプログラムとして受けるのが現実的な対応だと思われる。そのほか、運動療法、音楽療法、アニマルセラピー、特別なケアプログラム、およびこれらの併用療法などについても検討されているが、質の高い研究は少なく、十分な科学的根拠は得られていない

薬物療法の効果についてまとめたシステマティックレビューにおいて、コリンエステラーゼ阻害薬のアパシーに対する効果が確認されており、適応疾患の認知症者には第一選択薬として推奨される。その他の薬物に対する研究の結果は一貫せず、科学的根拠は十分ではないが、メマンチンも有効である可能性がある。しかし抗うつ薬(エスシタロプラム)、トラゾドン、抗てんかん薬(バルプロ酸、ガバペンチン)の効果は認められていない


認知症疾患診療ガイドライン

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