認知症の診断に有用な血液・脳脊髄液検査は何か

内科的疾患に伴う認知症を鑑別するために血液検査を実施する

変性性認知症の鑑別に有用な血液検査は確立されていない

脳脊髄液検査は中枢神経の感染症、腫瘍、炎症性疾患の除外を目的として行われる

脳脊髄液中のアミロイド β42(Aβ42)低下とリン酸タウの上昇が Alzheimer 型認知症で報告されている

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内科的疾患に伴う認知症および認知機能低下を生じる病態を鑑別するために血液検査を行うことが推奨される

血算、血液生化学、甲状腺ホルモン、電解質、空腹時血糖、ビタミンB12、葉酸の測定が推奨される

血液梅毒検査と human immunodeficiency virus(HIV)検査は、病歴上、診断が疑われる場合に実施する

脳脊髄液検査は非典型病型など認知症の病型診断が困難な症例に実施する

中枢神経の感染症、腫瘍(悪性リンパ腫や転移性腫瘍)、炎症性疾患について一般検査、細胞診により除外する

Alzheimer 型認知症ではアミロイドβ42(Aβ42)の低下、総タウ、リン酸化タウの上昇を認める

脳脊髄液中の Aβ42 の低下は脳内 Aβ 蓄積を反映すると考えられており、アミロイド PET の結果と相関する

これらバイオマーカーの特徴は Alzheimer 型認知症の診断基準(International Working Group(IWG)-2 基準、National Institute on Aging-Alzheheimer's Association workgroup(NiA-AA)基準に組みいれられている

リン酸化タウの測定は認知症の補助診断を目的とした検査として保険適用となっている。Aβ42 の測定は保険収載されていない

脳脊髄液バイオマーカーの測定は臨床治験の組み入れ基準や効果判定に応用されている

Alzheimer 型認知症にコンバートする軽度認知障害は、Aβ42 の低下、総タウ、リン酸化タウの上昇を認めることが報告されている

認知症各病型に於ける代表的な脳脊髄液バイオマーカーの変化を 表1 に示した

Lewy 小体型認知症では、Alzheimer 型認知症と比較して脳脊髄中 α-シヌクレインが低下していることがメタ解析により報告されているが実用化されていない

前頭側頭葉変性症のバイオマーカーも研究段階であり実用化されたものはない

Creutsfeldt-Jakob 病の補助診断を目的とした脳脊髄液・総タウの測定が保険収載されている

血液および脳脊髄液バイオマーカー検査の問題点として、検体採取および処理、また測定方法の標準化が十分行われていないことがある。そのため、診断のカットオフ値が測定キットや測定施設によって異なっている。この点をふまえ、わが国を含めた各国が共同してバイオマーカーの標準化を目指した国際プログラムを展開している


認知症疾患診療ガイドライン

症候、評価尺度、診断、検査