3C-1 せん妄の治療
せん妄の治療はどのように行うか
せん妄は常に予防を心がける。出現したせん妄に対しては、直接因子と誘発因子の治療、除去を行う。これらの対応や治療を行っても改善しない場合には、クエチアピン、ペロスピロン、リスペリドン、オランザピンなどの非定型型抗精神病薬による治療を考慮する。せん妄の現任調査、円滑な治療の実施、本人の安全確保のために、入院治療も考慮する。日本総合病院精神医学会によりせん妄の臨床指針が作成されており、参考にできる
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認知症は、せん妄発症のリスク因子であるため、常にせん妄の早期発見と早期治療を心がけておく必要がある。せん妄は、過活動型、底活動型、混合型に分類され、過活動型せん妄は運動活動性の量的増加、活動性の制御喪失、不穏、徘徊などを主体とし、低活動型せん妄は活動量・行動速度・状況認識・会話量・会話速度の低下、無気力、覚醒の低下/引きこもりを主体とする。低活動型せん妄は見逃されやすく、また発見されても治療の対象と考えられず放置されることがあるが、患者の苦痛は過活動型と同様であることがわかっているため適切な対応が必要である。せん妄の背景因子としては、① 準備因子(器質的脳障害の罹患・既往、高齢)、② 誘発因子(環境的要因:入院、騒音など、身体的要因:疼痛・脱水・低栄養など、感覚的要因:視力や聴力の低下など、精神的要因:心理的ストレス、不安など、睡眠関連要因:中やリズムの乱れなど)、③ 単一でもせん妄を誘発しうる直接因子(脳卒中、電解質異常、感染症、薬物服用・離脱)がある
認知症のせん妄に対する治療についてエビデンスレベルの高い報告は無く、科学的根拠は乏しい。しかし日本総合病院精神医学会せん妄指針改定班によるせん妄の臨床指針が参考になる。まず、せん妄は予防が重要であるため、誘発因子の除去を常に心がける。誘発因子の除去は出現したせん妄の治療にも有効である。また直接因子の治療が可能な場合は、これを行う、これらの治療を行ってもせん妄が改善しない場合には、非定型型抗精神病薬による治療を考慮する。使用する薬剤としては、クレチアピン、ペロスピロン、リスペリドン、オランザピンが推奨される。対象が高齢者であり半減期の短い薬剤が適当との観点からは、前2者がより推奨される。後2者は、それぞれ液剤、口腔内崩壊錠があることが利点である。経口薬の内服が困難な場合はハロペリドールの注射製剤を用いる。投与量は必要最小量とし、投与時刻は、睡眠覚醒サイクルの影響を最小とするため、原則夕方以降とする。せん妄の治療の際には、原因の精査、患者の安全の確保、治療の円滑な実施、静穏な環境の提供などの観点から入院治療も考慮する
国内複数施設で行われたランダム化比較試験 randomaized controlled traial(RCT)により、メラトニン受容体アゴニストであるラメルテオンを入院時より内服させることでせん妄発症率が低下したとの報告がなされているため、使用を検討してもよい。ここであげた全ての薬剤は適応外使用であるため、使用する際には、本人、家族に十分説明し、有害事象に留意することが必要である