幻覚・妄想に有効な非薬物療法・薬物療法は何か

幻覚・妄想を呈する認知症者に対しては、受容的に接して不安を軽減させることを第一に考える。また特定の人が妄想の対象となっている場合には、その人との時間的・物理的距離を取ることを考える。投与されている薬剤により幻覚・妄想が生じている可能性も考慮して確認する。Alzheimer 型認知症において、抗認知症薬やこれらの方法で改善しない場合には、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン 、アリピプラゾールなどの非定型精神病薬を検討する。また抑肝散を検討しても良い

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認知症者には、幻覚/妄想がしばしば認められる。非薬物療法として十分なエビデンスがある治療は現時点では存在しないが、まず行うべき対応は、本人の訴えを傾聴し、否定も肯定もせずに受容的・共感的態度で接して、安心感を与えることである。認知症の妄想には、自己能力の低下や家庭内、あるいは社会的立場に対する喪失感が関係する。また能力の低下や喪失感に対する抵抗や自己防衛が関係している。そのため安心感、役割、生き甲斐を持って貰うことが重要である。

家族の中の特定の人が妄想の対象となることがある。このような場合は、介護サービスなどを利用して、本人とその人との間に時間的・物理的距離をとる対応方が有用である。抗認知症薬を含めた薬剤が関与している可能性も考慮する。このような対応方で朱では対処できず介護者の負担が重い場合や、本人の苦痛が強い場合、早期に治療する必要がある場合などには薬物療法を行う。Alzheimer 型認知症の妄想に対しては、エビデンスは乏しいが、抗認知症薬の投与を試みることを検討しても良い。それでも改善しない場合は、抗精神病薬の仕様を検討するが、これは適応外使用であるため、本人と家族に十分説明して、有害事象に留意しながら使用する必要がある。また有効性が認められても漫然と服用させず、症状の改善に合わせて適宜減薬、もしくは休薬するなど副作用の提言を心がけるべきである。

認知症者に対する向精神薬の使用については、少数例での検討で効果を認めたとする報告は散見されるが、多数例を対象としたランダム化比較試験 randomized controlled trial(RCT)は行われていない。定型型抗精神病薬よりも非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール)の方が副作用が少ないため、非定型型抗精神病薬が推奨セル。また、投与にあたっては少量から開始し、3ヶ月以上症状が安定している患者については、注意深く減薬することが必要である。

なお、認知症を伴い Parkinson 病 parkinson's disease with dementia(PDD)や Lewy 小体型認知症 dementia with lewy bodiys(DLB)の原子に対する薬物療法については、CQ7-6 を参照。


認知症疾患診療ガイドライン

治療