4A-9 食事因子
認知症と関連する食事因子はあるか
認知症と食事、栄養に関する多くの報告がある。炭水化物を主とする高カロリー食や低蛋白食および低脂肪食は、軽度認知障害や認知症のリスクを高める傾向にある。個々の栄養素では確定的な結果は得られていない
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食事はヒトの生活活動の基本であり、健康や疾患に関連している。認知症と食事因子に関する研究はこれまでに数多く報告されているが、その多くは観察研究である。観察研究では食事、栄養と認知機能の関連性に膨大な知見が集積されてきているが、特定の食物、栄養素、あるいは食事パターンが認知症の発症リスクを高める、ないし抑制するという確定的な結果には至っていない。一部にはランダム化比較試験 randminzed cotrolled trial(RCT)が行われているが(例えば、抗酸化物質などの微量物質など)、これまでに確定的な結果は得られていない。そこで、比較的最近報告され、研究規模が大きく、臨床的有用性も大きいと思われる観察研究の結果を中心に解説を行う。
主要栄養素と認知機能低下に関する報告によれば、炭水化物を主とする高カロリー食は軽度認知障害や認知症のリスクを高めるかもしれない。その原因として、血糖負荷の高い食事による糖代謝やインスリン代謝への悪影響の可能性が考えられている。一方、低蛋白食や低脂肪食も軽度認知障害や認知症のリスクを高める傾向にある
久山町研究の食事形態と認知症のリスクに関しての報告では、大豆や大豆食品、野菜、藻類、牛乳および乳製品の窃取は認知消音リスクを軽減し、米の摂取量が多いと認知症のリスクが高まるとされている。これらの食材は日本人の一般的な食生活に多く見られるものであり、われわれ日本人にとって非常に有益な報告と言えよう。なお、米の摂取量が多いことは、米自身の有害性と言うよりは結果としての食事摂取の偏りが問題となるのかも知れない
Rotterdam Stury では、抗酸亜k物質と認知症に関しての報告があり、ビタミン E を多く含む食事を摂取すると長期間では認知症のリスクが軽度軽減される。一方、ビタミン C、ベータカロチン、フラボノイドは認知症のリスクと関連しなかった。また魚および ω-3 脂肪酸摂取と認知症のリスクは関連しなかった
一方、Alzheimer 型認知症患者の血漿栄養素を測定した報告のメタアナリシスでは、葉酸、ビタミン A、B12、C、E は有意に低下していたが、ビタミン D、亜鉛、銅、鉄は差が無かった
カフェイン、コーヒー、茶に関しては意見が分かれているが、総じて摂取者のほうが認知機能低下の程度が弱くなる傾向がある。ただし、どの程度の摂取量で関連するかについては明らかではない。個別的にみると、緑茶は認知機能低下のリスクを軽減するが、紅茶・コーヒーは軽減しないという報告がある一方、コーヒーなどカフェインの摂取は認知症のリクスを下げるかも知れないという報告もある