適度な飲酒は認知機能の低下や認知症の予防に有効か

適度の飲酒は認知症の予防効果があるという報告がある。“適度な飲酒量” には人種差、個人差の違いがあるので注意が必要である。飲酒が出来ない人には勧めるべきではない

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アルコールには元来神経毒性があり、大量飲酒は脳を萎縮させる。一方、適度の飲酒は認知症を予防することが報告されている。特に赤ワインの適度摂取は認知機能低下に対して予防的効果を持つと報告されている

健康的なライフスタイル(低・適度の飲酒を含む)を送っている人々の観察研究によれば、低・適度の飲酒では認知機能低下ないし認知症のオッズ比が低下するが、大量の飲酒では軽度認知障害から認知症へ移行する危険度が高くなる。ノルウェーで行われた Tromso Study は、少量から適度のワイン摂取者はアルコール低摂取者と比較して認知機能評価で優れていたと報告している。赤ワインには認知機能低下の予防的作用があるが、他の酒類、例えばビール、白ワイン、酒精強化ワイン(アルコール度の高いワイン)、スピリッツ(ジン、ウオッカなど)にはその効果が見られず、赤ワインに含まれるアルコール以外の成分に予防効果がある可能性を示唆する報告もある。また、高齢者の習慣的飲酒は血管性認知症の発症に対して保護的に作用する、という症例対照研究がある(オッズ比 0.48)

なお、飲酒と認知機能の関連性については、倫理的な制約があるためにランダム化比較試験 randomized controlled trial(RCT)による証明はおこなわれていない


認知症疾患診療ガイドライン

経過と治療