4A-4 脂質異常症治療
脂質異常症治療は認知症予防に有効か
中年期の脂質異常症は認知症、特に Alzheimer 型認知症の危険因子である。スタチン投与は認知症のリスクを軽減する報告があるが、中年期の師シスコントロールが望ましい。高齢者の血清コレステロール値の認知症への影響は不確定な球、高齢者へのスタチン投与は慎重を要する
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こうれまでの研究で、高コレステロール血症が Alzheimer 型認知症のリスクであることが示されている。そのため、治療薬であるスタチン投与による、Alzheimer 型認知症をはじめとした認知症発症の予防効果についての検証がなされてきた。しかしその結果は一定していない。全体的にはランダム化比較試験 randomized controlled traial(RCT)では効果的な結果が得られておらず、効果的とする結果は主に観察研究の影響が大きい
脂質異常症と認知症発症のリスク(心・脳血管障害や生活習慣病)を有する患者を対象とした 2件の RCT を解析したコクランレビューでは、スタチン投与は認知症発症、各種神経心理検査の変化、および有害事象発症に関連がなかった
Alzheimer 型認知症(疑いを含む)者へのスタチン投与による認知機能低下予防に関しては、大規模な RCT 3件のみを対象としたコクランレビューによる 748人のメタアナリシスがある。結果として、Alzhiemer's Disease Assesment Scale-cognitive subscale(ADAS-cog)(mean difference -1.12:95%CI -3.99 ~ 1.75, p = 0.44)、Mini Mental State Examination(mean difference -1.53: 95%CI -3.28 ~ 0.21, p = 0.08)、clinical globai impression of change(CGIC)(mean difference -0.02: 95%CI -0.14 ~ 0.10 p = 0.08)と、いずれのバッテリーにおいても有意な進行抑制効果は見られなかった。スタチン群とプラセボ群間での有害事象発現率にも差はなかった
認知機能評価がなされた 27件(RCT 3件、観察研究 16件、ケースコントロール 4件、横断的研究 4件)の研究のメタアナリシスでは、十分なエビデンスレベルでは無いが、スタチンは少なくとも米国食品薬品局 Food and Drug Administration(FDA)が懸念する認知機能への悪影響を指示するデータはなかったことを強調している
一般住民におけるスタチンの脂質異常症改善以外の作用に関して調べた観察研究のシステマティックレビューでは、13件のメタアナリシスにおいてスタチン使用者での認知症発症率が低かった(OR 0.70, 95%CI 0.43 ~ 0.81)軽減した
20件の研究(16件の観察研究、3件のケースコントロール研究、1件の RCT)に基づいたメタアナリシスでは、スタチンは認知症の発症リスクを 38%軽減した(RR 0.62, 95%CI 0.43 ~0.82)、エンドポイントを Alzheimer 型認知症に限っても、発症のリスクを 24%(RR 0.76, 95%CI 0.65 ~ 0.90)提言した
2件の観察研究では短期間よりも長期間のスタチン使用が、認知症を予防する効果があるとしている
脂質異常症による認知機能低下への影響は年代によってことなる。中年期の脂質異常症、特に高コレステロール血症は Alzheimer 型認知症の危険因子であることが示されており、中年期の脂質異常に対する厳格なコントロールが望ましい。高齢者では血清コレステロール値が高いほど Alzheimer 型認知症になりにくいという報告もあり、高齢者へのスタチン投与は慎重を要する
軽度認知障害に対するスタチン治療は、軽度認知障害・認知症の発症を 1/2 ~ 1/3 低下するという報告や、Alzheimer 型認知症のハザードリスクを 67%低下させるという報告がある
スタチン投与と血管性認知症発症の関連を調べたシステマティックレビューでは、予防効果は見られず、血管性危険因子のリスクを持つ高齢者へのスタチン投与は、認知機能低下や認知症発症の予防効果はなかった