排尿障害の対応はどのように行うのか

認知症者では機能性尿失禁と切迫性尿失禁が多い、泌尿器科的な基礎疾患を否定した上で、行動療法は効果が期待出来る方法である。一方、認知症者に対する薬物療法については十分なエビデンスは存在しない

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排尿障害をきたす器質的疾患の有無に注意し、除外診断をする。認知症では機能性尿失禁と切迫性尿失禁が多く、ガイドラインを参考にしながら治療を行う( https://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.pho?main_tab=1&menu_id=9# )。認知症では、① トイレに行けない、② トイレの場所がわからない、③ 放尿する、④ ズボンを下ろせない、⑤ トイレに行く意欲がなくなるなどによる機能性尿失禁を呈することが多い

1. 行動療法

1)排泄介助:① 一定時間毎のトイレ誘導、② パターン排尿誘導、③ 排尿習慣の再学習、2)膀胱訓練、3)腹圧性尿失禁には骨盤底筋のリハビリテーションが推奨される

2. 排尿障害の薬物療法

女性の切迫性尿失禁には、抗コリン薬(プロピベリン、トルテロジン)を用いる。腹圧性尿失禁にはの薬物療法で有効なエビデンスがある薬は無いが、抗コリン作用をもつ三環系抗うつ薬(イミプラミン)を用いることもある。溢流性尿失禁の前立腺肥大には、交感神経選択的α1阻害薬(タムスロシン、ナフトピジル)、神経因性膀胱に対しては、コロン作動薬(ムスカリン受容体刺激薬:ベタネコール)を使用する。抗コリン薬による便秘の増悪、三環系抗うつ薬の抗コリン作用による認知機能低下、α1 阻害薬による起立性低血圧には留意が必要である。

尿意切迫、切迫性尿失禁、頻尿を主な症状とする過活動性膀胱に対しては、選択性ムスカリン受容体拮抗薬(抗コリン薬)であるフェソテロジン、トルテロジン、ソリフェナシン、イミダフェナシン、オキシブチニンや β3 受容体作動薬ミラベグロンを用いる。オキシブチニンは脂溶性が高く血液脳関門を通過し、認知障害を起こす可能性が指摘されている。また、コリンエステラーゼ阻害薬と抗コリン薬の併用は、コリンエステラーゼ阻害薬単剤のみの場合と比べて、日常生活動作の有意な低下を引き起こす

3. その他の治療法

① 認知機能、身体機能に合わせた環境整備、② 衣類の工夫、 ③ 尿道カテーテルの使用、恥骨上カテーテルの設置、外採尿器の使用、尿吸収製品などを使用、④ 膀胱頸部支持器の使用が提案されており、⑤ 尿失禁がみられたら、早期に陰部を清拭し清潔を保つ事を推奨している

4. 薬剤性の排尿障害

三環系抗うつ薬は排尿障害がある男性患者には可能な限り使用をひかえる。Parkinson 病治療薬のうちトリヘキシフェニジル、ビベリデンは排尿障害をきたすこともあり、レボドパ使用が推奨されている


認知症疾患診療ガイドライン

治療