若年性認知症とは何か

若年性認知症とは、医学的には 65歳未満の認知症発症者を示すが、制度利用上は、利用時点で 65歳未満であることを意味している


これまで、発症時期により若年性認知症、初老期認知症、老年期認知症などの用語が用いられてきたが、若年性 Parkinson 病などにおいては「若年性」は 40歳未満発症を指しており、同じ「若年性」という用語が疾患により異なる年齢層を指す場合がありうることから、混乱を避けるために若年性認知症や老人性認知症といった用語は用いない方が望ましいと指摘があった(日本認知症学会 編:認知症テキストブック 2008)。しかしながら、厚生労働省から2009年に疫学調査が報告され、同年「若年性認知症施策」が打ち出された。その後は 2013年の認知症施策推進 5カ年計画(オレンジプラン)、2015年認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)においても「若年性認知症」と明記され、現在では 65歳未満発症者を若年性認知症と表記することが行政レベルで一般的になっている

「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究報告書」(2009, 朝田ら)によると、18〜64歳人口における人口 10万人あたりの若年性認知症者数は 47.6人(95%CI 45.5〜49.7)で、男性 57.8人、女性36.7人で、全国の若年性認知症者推定者数は 3.78万人(95%CI 3.61〜3.95)、原因疾患の内訳は、血管性認知症(39.8%)、Alzheimer 型認知症(25.4%)、頭部外傷後後遺症(7.7%)、前頭側頭葉変性症(3.7%)、アルコール性認知症(3.5%)、Lewy 正体型認知症(3.0%)と報告されている。

厚生労働省によると、若年性認知症者の支援には、行政や事業者その他の各団体などが、相互に若年性認知症対策に関する理解を深め、有機的な連携のもとで、ひとりひとりの状態に応じた多様なサービスが総合的に提供されるように積極的に努めること、とされている。十分なサービス提供が整っていない環境の中、インフォーマルサービスを含めた積極的かつ包括的な制度利用が求められる

若年性認知症では、年齢が若年であることに加え、本人が家計や育児の中心的担い手であることや家族に就学中の子がいるなど、高齢期の認知症とは異なる生活課題が存在することを念頭に置いた対応が必要である

なお 2016年度からは、都道府県毎に本人や家族からの相談窓口を設置し、そこに若年性認知症支援コーディネーターが配置された。これは、本人のニーズに合った支援が行われることを目的として、相談窓口としての役割のみならず、市区町村や関係機関との連携体制の構築、若年性認知症にかかる正しい知識の普及啓発を行う事が求められるものである


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