若年性認知症者の経済的課題についての支援制度にはどのようなものがあるか

障害者総合支援法の精神障害者として利用できる自立支援医療や、傷病手当金、障害年金などがあるが、病状や病期、世帯収入などによっても適応が異なる


就労中に若年性認知症の診断を受けた場合、最初に利用できる経済的なサポートは自立支援医療制度による医療費の公費負担であり、休職した場合には 1年6ヶ月間傷病手当金を受け取ることができる。また、初診日を 6ヶ月経過した時点で精神障害者保健福祉手帳の申請が可能となり、これによってさまざまなサービスや税の控除を受けることが可能となる。退職後、初診日より1年6ヶ月以降であれば、障害年金の申請を行うことができる。また、退職後にも継続して傷病手当金を受ける場合には、いったん雇用保険(失業手当)の及不延長手続きをしたおく。この段階でさまざまな障害福祉サービスの利用が可能となり、その後、傷病手当金の受給が終了したら、雇用保険加入者は一定期間失業保険の給付を受けることもできる。

自立支援医療制度は、本来は精神保健福祉法で規定されていた「精神通院医療費公費負担制度」に総称するものであるが、2006年の障害者自立支援法の施行によって、他の通院公費負担制度と一元化され、名称が変更になった。認知症の診断を受け、それによって入院によらない医療を受ける場合は、市区町村窓口に申請してこの制度を利用することにより、医療費の自己負担は原則 1割になる。また、傷病手当金は、健康保険法で定められた療養中の生活保障の制度であり、療養中であり、労務不能がある日が連続して 3日を超え、4日目以降は給料を支給されていない健康保険組合の被保険者は、1年6ヶ月の間、1日につき標準報酬日額の 2/3 を受け取ることが出来る

精神障害者保健福祉手帳は、精神保健福祉法によって定められている制度であり、一定程度の精神障害の状態にあることを認定し、自立と社会参加の促進を図るために、さまざまな支援を受けることができるようにすることを目的としている。手帳交付によって受けられるサービスには、全国一律で受けられるサービスと、地域・事業者によって受けられるサービスがある。前者には、所得税・住民税・相続税の控除、自動車税・自動車取得税の軽減、公共料金の減免、生活福祉資金貸し付けなどがあり、後者には鉄道・バス・タクシーの運賃割引き、携帯電話料金・上下水道料金割引、公共施設の入場料割引、福祉手当・生活保護の障害者加算、公営住宅の優先入居などがある。精神障害者保健福祉手帳は市区町村窓口に申請する。手帳の等級は障害の程度によって 1級から 3級に区分されている。留意すべき点は、初診から 6ヶ月を経過していなければ診断書が作成できないため、申請はできないということである。この段階で自立支援医療制度を同時申請することも可能である。

精神障害者保健福祉手帳とは別に、初診から 1年6ヶ月を経過すると、国民年金や厚生年金の加入者は障害年金を受け取ることができる。国民年金の被保険者は障害基礎年金を受け取り、厚生年金保険の加入者は、障害基礎年金に上乗せする形で、障害厚生年金を受け取ることができる。障害の等級が 3級よりも軽い場合には障害年金を受け取ることはできないが、障害手当金を一時金として受け取ることができる

そのほか、生命保険等の保険の利用、おむつ使用の減免や、自治体によるが保育制度などで利用可能なものがある場合がある

また、2015年7月1日から、前頭側頭型認知症及び意味性認知症は、難病法に基づく指定難病に指定されたため、要件を満たせば一定の医療補助がある

制度利用のフローについては 図1 に概略を示す


認知症疾患診療ガイドライン

諸制度と社会資源