2-8 認知症の画像検査
認知症の画像検査はどのように進めるか
推奨
形態画像検査(CT/MRI)を行い、治療可能な認知症を除外する
MRI 検査により得られる脳局所の萎縮パターンと信号変化の有無と分布は、認知症の鑑別診断に有用である
脳血流 SPECT、ドパミントランスポーターシンチグラフィ、MIBG 心筋シンチグラフィなどの機能画像は認知症の鑑別診断に有用である
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治療可能な脳外科的な認知症、例えば慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、正常圧水頭症などを除外するために形態的画像検査(CT/MRI)を実施する事が望ましい
MRI は CT と比較して優れた空間解像度を有しており、血管性病変の描出に優れている。また、MRI は脳委縮のパターン判別に優れており鑑別診断に有用である(図1)
MRI による信号変化の評価は、脳血管障害、白質脳症、脳炎、脱髄性疾患などの鑑別診断に有用である(図2)
基本的な MRI シークエンスは T1 強調画像、T2 強調画像、FLAIR 画像である
脳腫瘍、炎症性病変、感染性病変が疑われる場合には造影剤検査を行い、造影効果の有無を調べる
拡散強調画像は、急性期脳血管病変および Creutsfeldr-Jakob 病における大脳皮質、もしくは線条体・視床の高信号病変の検出に優れている
T2* 強調画像及び susceptibility-weighted imaging(SWI)はアミロイド血管症などで見られる微小出血の検出に優れている
大脳萎縮の評価には voxel-based morphometry(VBM)解析が有用であり、わが国では Voxel-based spacific regional analysis system for Alzhimer's disease(VSRAD)解析が広く行われている
VSRAD 解析により得られる Z スコアは、内側側頭部の萎縮の程度を表す指標であり、Alzheimer 型認知症の診断や除外診断、重症度診断を Z スコアの値のみでは診断できない点は留意すべきと思われる
脳血流 SPECT は血流低下部位による認知症の鑑別診断に有用である
脳血流 SPECT では 123I-IMP、99mTc-ECD などの核種が用いられる
脳血流 SPECT の所見は視覚読影による判断に加え、統計学的な手法を用いた解析(3D-SSP、eZIS など)が用いられる
Alzheimer 型認知症では後部帯状回、楔前部、頭頂葉連合野の血流低下が特徴である
FDG-PET は糖代謝の低下を検出し、脳血流 SPECT よりも感度が高いが、保険適用はない
Lewy 小体型認知症では、心臓交感神経の障害に伴う MIBG シンチグラフィにおける MIBG の取り込みが低下する
123I-FP-CIT を用いたドパミントランスポーターシンチグラフィは、線条体におけるドパミントランスポーターの密度を反映すると考えられており、Lewy 小体型認知症と Alzheimer 型認知症の鑑別を目的とした検査として保険適用が認められ、臨床応用が進んでいる
分子イメージングとしてはアミロイドβ(Aβ)とタウを可視化する技術が確立さrている
Aβ を標的とするリガンドとして 11C-PIB、18F-Florbetapir、18F-Flutemetamol、18F-Florbetaben などが開発されている
アミロイド PET 検査の臨書的意義づけについては CQ6-6 を参照
タウを可視化するリガンドとしては11C-PBB3、18F-T807、18F-THK5351 などが開発されている
これらの技術は主に研究目的で使用されており、現在、保険適用はない