転倒・骨折の対応・予防はどのように行うか

認知症者は、非認知症者よりも転倒のリスクは葯 8 倍、骨折のリスクは葯 3 倍高い。基礎疾患の治療、薬物の調整、運動、歩行とバランス訓練、補助愚を装着しての訓練、環境整備、家庭環境への適応訓練を行い、多面的な介入で転倒与党に取り組み、骨粗鬆症治療を考慮する。

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高齢者の転倒による骨折は、寝たきりの主たる原因のひとつであり、転倒が日常生活道亜 activities of daily living(ADL)や意欲を低下させ、せん妄の誘因にもなる。

認知症者は、非認知症者よりも転倒のリスクは葯 8 倍、骨折のリスクは葯 3 倍高い。また、起立性低血圧のある患者に於いては、ない患者と比べ、ハザード比 2.13 と転倒率が上がる。病型による転倒リスクは、認知症を伴う Parkinson 病 Parkinson's disease with dementia(PDD)、Lewy 小体認知症 dementia with Lewi bodies(DLB)、血管性認知症、Alzheimer 型認知症の順で高く、PDD や DLB はバランスや歩行、起立性低血圧や自律神経機能障害が関係していると考えられる

英国で 1988-2007 年の後方視的研究で、認知症群は 1年間に 17.4人/1,000人の大体骨折が認められ、非認知症群の 6.6人/1,000人に対して、認知症群は 3.2倍のリスクがある。

米国・英国老年学会整形外科医委員会による転倒予防ガイドラインは、2010年に改定され「過去 12月間に転倒が 2回かそれ以上合ったか」「重篤な転倒があったか」「歩行やバランス保持の困難があるか」のスクリーニングを行い、薬を最小限にする、個人に合わせた運動プログラム、視力障害の治療、起立性低血圧の管理、不整脈の管理、ビタミンD の摂取、足と履き物に注意する、家庭内の環境を変える、教育・情報を提供する、など多面的な介入を推奨している。ただし認知症の患者に対する単一あるいは多面的な介入のエビデンスは示されていなかった。その後、運動会入のメタ解析(7つのランダム化比較試験)が行われ、運動会入により認知症者の転倒を減少させた。

認知症者は骨粗鬆症由来の骨折をしやすいものの、骨粗鬆症治療薬が投与されていないことが多い。適切な骨粗鬆症の評価と治療・指導を考慮する。ビタミンK、ビタミンD 欠乏症の高齢 Alzheimer 型認知症には大腿骨頸部骨折の危険度が増している。骨粗鬆症治療薬には、ビスホスホネート、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK などがある。骨粗鬆書については「骨粗鬆症予防と治療ガイドライン 2015年版」を参照されたい。


認知症疾患診療ガイドライン

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