焦燥性興奮に有効な非薬物療法・薬物療法は何か

焦燥制興奮に対しては、パーソンセンタードケアを基本として、症状が生じた理由や原因を考え、それを解決するように心がける。また介護者が認知症者との適切な会話スキルを学び、実践する方法も有効である。そのほか、非薬物療法としては、グループ活動、音楽療法、タクティールケア、マッサージの有効性が示されており検討する。薬物療法としては、リスペリドン、アリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬の有効性が示されている。また抑肝散、チアプリド、カルバマゼピン、セルトラリン、エスシタロプラム、トラゾドンの使用も検討する

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焦燥制興奮に対する 33 の非薬物療法の湯構成を検討したシステマティックレビューでは、介護者がパーソンセンタードケアを学習したり、認知症者と適切に会話するスキルを学習したりすることによって、認知症者の焦燥制興奮が改善する事が示されている。その他の非薬物療法としては、グループ活動、プログラムに基づいて専門家が行う音楽療法、タクティールケアやマッサージが有効とされている

非薬物療法で十分な効果が得られない場合は薬物療法を検討するが、以下の薬剤は全て適応外使用であるため、本人と家族に十分説明して、有害事象に留意しながら使用する必要がある。また有効性が認められても漫然と服用させず、症状の改善居合わせて適宜減薬、もすくは休薬するなど副作用の低減に心がけるべきである。

Alzheimer 型認知症の焦燥制興奮と工藝規制に対する、偽薬を対象とした非定型抗精神病薬についての 18 の研究をまとめたシステマティックレビューでは以下のようにまとめられている。すなわち、低容量のリスペリドンが最も期待出来る。アリピプラゾールはリスペリドンと同等の期待が出来るが、オランザピンの効果は一定していない。クエリアピンは効果が認められなかった。ただし、以上は短期間(12週以下)の結果であり、長期間使用した場合の有効性に関する科学的根拠は十分でない。また、より長期間の使用は脂肪を含む副作用のリスクが高くなる。他方、Alzheimer 型認知症の焦燥制興奮にリスペリドンが有効だった際に、16週間後の処方中断で焦燥制興奮の再発が有意に高まる事も報告されており、減量・中止の時期や方法は、患者の状態を考慮して決定する必要がある。

抗うつ薬に関するシステマティックレビューでは、未だ研究が少なく十分なエビデンスは集積されていないが、セルトラリン、エスシタロプラム、トラゾドンの有効性が報告されている。気分安定薬については、カルバマゼピンの効果は期待出来るが、バルプロ酸の使用は推奨されていない。また抑肝散の有効性も、わが国の多施設共同研究で報告されている。チアプリドも焦燥制興奮や攻撃性に対する有効性が報告され、脳梗塞後遺症に伴う攻撃行為、精神興奮に対して保険適用を有しているため考慮しても良い。


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