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3A-3 高齢認知症者への薬物療法
高齢の認知症者への薬物療法の注意点と原則は何か
高齢認知症者では有害事象が生じやすい。 ① 薬物投与は、その種類によっては若年者の 1/2~1/4 了と言った少量で開始することを検討する、② 薬効評価は短期間に行う、③ 服薬方法は簡略にする、④ 特有の有害事象に注意を払いながら多剤服用を出来るだけ避ける、定期的に薬剤の種類、投与量、長期投与処方の必要性を評価する、⑤ 家族、介護者、薬剤師などで服薬アドヒアランスを確認する
認知症の治療の標的症状には、中核症状と呼ばれる認知機能障害と、妄想、易怒性などの BPSD があり、これらは薬物療法と非薬物療法を組み合わせて治療する。
認知機能低下には特異的な薬物療法がある場合はそれらを開始し、非薬物療法も併用する。
BPSD が出現した場合はその原因となる身体疾患の有無やケアが適切か否かを検討し、治療としては非薬物療法を薬物療法より優先する。
認知機能障害に帯する治療
Alzheimer 型認知症においては、コリンエステラーゼ阻害薬や NMDA 受容体拮抗薬の使用が推奨される。
Lewy 小体型認知症については、コリンエステラーゼ阻害薬の使用が推奨される。
服薬後の認知機能は Mini-Mental State Examination などの心理検査で定期的に評価する。家族からは症状変化を聞き取り、それぞれの状態に適切なケアを指導する。
BPSD に対する治療
BPSD に対しては、その原因となりうる身体状態の変化や、ケアや環境が適切かを評価する。
環境調整としてデイサービス等の介護保険サービスの利用も検討する。
非薬物療法は BPSD を軽減する。
在宅や施設においてはケアの基本はその人らしさを尊重するパーソンセンタードケアを基本とする。介護者への適切なケアの指導は施設入所を遅らせる。感覚刺激を用いる作業療法は BPSD を改善するとされる。
薬物療法は、非薬物療法によって BPSD を減少させる十分な努力を行なった後にのみ行われるべきである。
薬物投与を優先して行うべき例外的状況は、① 代うつ病の状態(希死念慮の有無を問わない)、② 他者に危害を加える可能性が非常に高い妄想、③ 自分自身や他人を危険にさらす原因となる攻撃性、の 3つであるとする意見がある。
薬物療法を優先すべきかどうかは、各患者の状況を十分検討して判断する必要がある。抗精神病薬を含む向精神薬の投与が必要と判断した場合は、薬物の効果と、転倒、骨折、嚥下障害、誤嚥性肺炎、死亡リスク上昇等の不利益、及び適応外使用であることを十分に説明する。
向精神薬を開始した場合は、継続的に効果と副作用を評価し、不利益が利益を上回ると考えられる場合は、薬物中止で精神症状が再燃する可能性に注意しつつ、薬物の減量中止を検討する。