2-10 身体的・神経学的所見
認知症の診断の際に留意すべき身体的・神経学的所見は何か
認知症を診断するプロセスにおいて身体的診察および神経学的診察を行う
身体的診察により見いだされた所見が、内科疾患に伴う治療可能な認知症の診断につながることがある
神経学的診察で得られた所見は、変性性認知症の病型診断の鑑別に有用である
認知症を診断するう最初のステップにおいて、身体的診察および神経学的診察を実施する
身体的診察としておこなうもの
① 頭髪、皮膚
② 眼瞼結膜、瞳孔
③ 口腔粘膜、咽頭、舌
④ 頸部:リンパ節、甲状腺、血管雑音の聴取
⑤ 脈拍と血圧
⑥ 胸部
⑦ 腹部
⑧ 四肢:皮膚、関節浮腫の有無について確認
頸部血管雑音、脈拍不整は脳血管病変の存在を示唆する
聴覚障害に伴う耳鼻科的心庵の有無に留意する
脱毛、甲状腺主張、下肢の被圧痕性(non-pitting)浮腫は甲状腺機能低下症で認められる
結節性紅斑、口腔内アフタ、陰嚢潰瘍は神経 Behçet 病で見られる身体所見である
神経学的診察として調べるもの
② 意識レベル
② 認知機能検査
③ 脳神経領域
④ 四肢の運動系
⑤ 深部腱反射と病的反射
⑥ 不随意運動
⑦ 感覚系
⑧ 姿勢・歩行
⑨ 自律神経系
意識障害の有無はせん妄との鑑別に必要である
半盲があれば脳血管性病変が脳内で生じている可能性がある
検眼鏡を用いて眼底を観察し乳頭浮腫があれば、頭蓋内圧亢進を生じる頭蓋内病変の存在を効力する
対光反射が減弱していて輻輳反射が保たれる Argyll Tobertson 瞳孔は神経梅毒を疑う所見である
垂直性眼球運動障害は進行性核上皮麻痺で高頻度に認める
眼球運動制限と複眼は Wernicke 脳症で認められる
肢節運動失行、観念運動性失行は大脳皮質基底核変性症に特徴な朝貢である
舌の萎縮、線維束攣縮は認知症を伴う運動ニューロン疾患で認められる
舞踏運動は Hantington 病、歯状核赤核・淡蒼球ルイ帯萎縮症で認める
安静時振戦は Lewy 小体型認知症や Parkinson 病で認められる
ミオクローヌスは Creutsfelt-Jakob 病、大脳皮質基底核変性症、Alzheimer 型認知症などで認められる
把握反射や吸引反射などの前頭葉徴候は、前頭側頭葉変性症の患者で認められる
四肢遠部の感覚障害はビタミン B12 欠損症による末梢神経障害で生じる
深部知覚障害は神経梅毒による脊髄癆や亜急性連合変性症で認められる
小刻み歩行とすくみ歩行は Lewy 小体認知症に特徴的な歩行である
開脚位のすり足歩行は正常圧水頭症で見られる歩行である
起立性低血圧、排尿障害、便秘などの自律神経障害は Lewy 小体型認知症で認められる