Lewy 小体型認知症 dementia With Lewy bodies(DLB)と認知症を伴う Parkinson 病 Parkinson's disease with dementia(PDD)の臨床・病理学的異同は何か

① Lewy 小体病 Lewy body disease(LBD)は Lewy 小体を病理学的特徴とするすべての病態を包括する疾患概念である ② DLB と PDD の間に本質的な違いがあるという証拠は無い。DLB と PDD は LBD という 1つの疾患スペクトラムで捉えることができる ③ 研究などで用いられる操作的な基準として、認知症がパーキンソニズムに先行した場合 DLB、パーキンソニズムが認知症に 1年以上穿孔した場合 PDD とする指摘もある

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1. DLB と PDD の用語上の問題

DLB は α シヌクレインを主要構成成分とする Lewy 小体の出現を神経病理学的特徴とする認知症を指す用語として、1995年第1回 DLB 国際ワークショップで提案された。一方、Parkinson 病(PD)としての経過後に認知症を発症した場合、「認知症を伴う Parkinson 病(PDD)」と呼ばれてきた。国際ワークショップでは、パーキンソニズムが認知症発症の 1年以上前から存在する場合を PDD とし、認知症発症がパーキンソニズム発症前、あるいはパーキンソニズム発症後 1年以内であれば DLB とした(1年ルール)。この 1年ルールはその後第3回ワークショップにおいても存続している。ただしこのルールは研究などで用いられる操作的な基準にすぎない

2. DLB と PDD の異同

DLB のパーキンソニズムは、PDD と比較して安静時振戦や左右差が少ない、処理速度、視空間認知機能、遂行機能、注意機能などの認知機能障害は DLB のほうがより大きい、病理学的に、DLB のほうが Alzheimer 病理の併存が多く、また PDD の黒質の神経細胞脱落は DLB より高度なことなどが報告されている。しかしながら、両者の間に質的な差があるという証拠は無い

2006年に開かれた PDD と DLB との境界に関するカンファレンスでは、「DLB とPDD の臨床症状と経過の違いから両者を区別することは正当化されるが、両者は α シヌクレイン封入体という共通の病変を有することから、病因研究のためには単一の LBD モデルがより有用と考えられる」と結論している。なお PDD の診断基準も提唱されている(表 1、2)。中核的特徴として Parkinson 病と Parkinson 病の経過中に出現し進行する認知障害があげられ、アパシー、抑うつ気分あるいは不安感、複雑で構築された幻視、被害妄想、不貞妄想あるいは幻の同居人などの妄想、過度の日中の眠気は PDD に関連する臨床的特徴にあげられている

α シヌクレインを主要成分とする Lewy 小体が、脳の神経細胞内や自律神経領域に多発する。分布によって、びまん型(新皮質型)、辺縁型、脳幹型、脳幹部にはほとんど見られない大脳型に分類される。また多くの例で Alzheimer 病変を合併し、その程度により Alzheimer 型、通常型、Alzheimer 病変が見られない純粋型に分類される。病変の広がりには、延髄から上行、扁桃核から大脳皮質あるいは脳幹への進展、大脳皮質から脳幹方向への下行などいくつかの進展形式がある。このような病理の多様性が LBD の表現型のスペクトラムの広がりをもたらすと考えられている


認知症疾患診療ガイドライン

Lewy 小体型認知症