原発性進行性失語 primary progressive aphasia(PPA)の分類と評価はどのように行うか

原発性進行性失語は、① 非流暢性/失文法性② 意味型③ ロゴペニック型に分けられるが、いずれにも含まれない例もある。

臨床分類は、言語・意味記憶に関する評価及び病巣分布をもとにおこなう。

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変性性認知症のうち、失語症で初発し、経過を通じて失語症が前景に立つ一群は原発性進行性失語と呼ばれる

失語症の特徴から 表1 に示す様に 3型に分けられ、MRI による萎縮部位、SPECT/PET による血流/代謝低下部位は各型に特徴的な分布を呈する

失語症の臨床的特徴から失語の臨床型を診断するためには、自発話の流暢性(構音の歪み、発話時の努力性の有無など)、単語レベルでの聴覚性理解、呼称、復唱の機能を観察する

非流暢性/失文法型は、発語失行と呼ばれる不規則な音の歪みと、発話/理解における文法の障害が特徴的であるが、一方だけを呈する症例もある

典型的には不規則な音の歪みがある努力性の発話で単語の理解は保たれるが、文の理解が障害される

左前頭葉後部から島にかけての萎縮/血流低下がみられる

類縁の病態として原発進行性発語失行が知られており、発語失行だけで理解障害はない。原発性発語失行は、失構文が目立つ非流暢性/失文法型 PPA 症例と萎縮部位が類似している

意味型は、名詞の想起/理解の障害が中核症状で、ものの知識などの意味記憶の障害へと進行する

発話は流暢で復唱は保たれるが、単語レベルでの理解障害、呼称障害がある

進行すると言語だけでなく意味記憶が障害され、ものを見てもそれが何であるかわからなくなる。左側頭葉前部の萎縮/血流低下が見られる

ロゴペニック型は、自発話は流暢だが単語の想起困難があり、呼称も不要である

単語レベルの理解と復唱は可能だが、句や文などの復唱は不良で、音韻の誤りが目立つ

左側頭葉後部から頭頂葉にかけて萎縮/血流低下が見られる

PPA の分類は、以上のような各言語の障害の特徴をもとに行われる

半定量的な評価には Western Aphasia Battery(WAB)失語症検査や標準失語症検査などが使われるが、状況図の説明だけでも特徴を抽出することができるという報告もある

PPA 3型の分類が提唱されて以来、多数例での検証が行われている。

しかし、いずれにも当てはまらない症例が 1/3 あることや、2つの方に当てはまってしまう症例もあることがわかり、分類の見直しも進められている

PPA の分類は臨床的なものであるため、特定の原因疾患とは必ずしも対応しない

病理学的診断との対応

非流暢性/失文法型は前頭側頭葉変性症 frontotemporal lobar degeneration(FTLD) 77%(タウ:51%、TDP-43:26%)、Alzheimer病 21%

意味型は FTLD 88%(タウ:15%、TDP-43:73%)、Alzheimer病 12%

ロゴペニック型は FTLD 36%(タウ:11%、TDP-43:24%)、Alzheimer病 56%

おおまかには非流暢性/失文法型は FTLD-tau、意味型は FTLD-TDP との関連性が強く、ロゴペニック型は Alzheimer 病が多いものの、原因疾患は一様ではない


認知症疾患診療ガイドライン

症候、評価尺度、診断、検査