9-1 進行性核上皮麻痺の認知症症状
進行性核上性麻痺 progressive supranuclear palsy(PSP)の認知症症状の特徴は何か
典型的な PSP(Richardson 症候群とも称される)の認知障害の症状は思考緩慢、衝動性、固執性、保続などで、皮質下認知症と総称される
半数の症例では認知症、人格の変化、感情障害、記憶障害などで発症する
C
PSP は核上性眼球運動障害、頸部後屈、認知症(前頭側頭型認知症)を主徴とする症候群で、PSP の約半数を占める古典的 PSP(Richardson 症候群)の臨床像の認知障害の特徴をここで述べる
1. PSP の初発症状
2/3 の症例はバランスの取りにくさ、予期せぬ転倒、構音障害(声が詰まるような発生で、吃音、同語反復、反響言語など)で発症する。行動障害も約半数の症例で見られ、うつ、易刺激性、攻撃性、感情の不安定さ、アパシー、思考緩慢、記憶障害などがある。視覚障害に関する主訴はかすみ目、階段を降りにくい、物が食べにくい、複視、眼球乾燥などが多い、
2. PSP の行動障害・認知障害の特徴
健忘を主訴とすることが多いが、基本は注意障害、無頓着、周囲への関心の欠如である。古くは皮質下認知症とも称されたが、前頭側頭型認知症 frontotemporal dementia(FTD)の特徴を示し、思考緩徐、注意障害、健忘、アパシー、語彙の低下、うつなどを示す。思考緩徐による反応速度の低下が顕著で、問いに対する返答が無いかのように見えるが、暫くすると正確な返答がある。PSP 患者では易転倒性について無頓着で、転倒を繰り返しても無防備に、かつ、衝動的に、或いは保続として歩行し、転倒する。行動障害としては動作や言動の保続があり、「applause sign」として検出できる(評価者が手を素早く 3回叩いて見せて、患者に同じように 3回手を叩くように指示する。PSP では運動を抑制することが出来ず、4回以上叩いてしまうことが多い)。なお、PSP でのギャンブルや強迫食いなどの衝動性行動障害の報告があるが、ドパミンアゴニストの服薬と関連があるとするものと、ないとするものがあり、一定していない。Yatabe らの Neuropsychiatric Inventory(NPI)と Sterotypy Rating Inventory(SRI)による検討では FTD と PSP との間に差異は認められなかった