3C-5 サルコペニア、フレイルの対応
サルコペニア、フレイルの対応はどのように行うか
認知症では、サルコペニア、フレイルを合併しやすい可能性がある。抵抗運動 resistance training は認知症に合併したサルコペニア、フレイルの改善に有用な場合がある
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サルコペニアは老年期に良く見られる病態で、「筋量と筋力の進行性かつ全身性の現象に特徴付けられる症候群で、身体機能障害、生活の質 Quolity of life(QOL)低下、死のリスクを伴うもの」と定義される。原因として、加齢、活動的か、栄養低下、疾患が挙げられる。フレイルとは、加齢により様々な生理的機能が低下し、ストレスへの耐性が低下した状態をいう、筋力、持久力が低下するなど、要介護状態の前段階と捉えることができ、転倒、入院、死亡など望ましくない転機を招くリスク因子となる。
認知症高齢者では脳機能正常の高齢者と比較して、サルコペニア、フレイルを合併しやすい傾向がある。近年、フレイルと認知機能障害の関連が注目されている。
認知症者のサルコペニアやフレイルへの介入研究がいくつか報告されている。ナーシングホームの Alzheimer 型認知症者に対して、会話しながらの歩行を行ったところ、会話または歩行を単独で行った場合と比較して身体機能低下が有意に抑制された。在宅のフレイルな Alzheimer 型認知症者に対して、介護者の指導による運動(エアロビクス、筋力トレーニング、バランス運動)を 12週間行ったところ、対照群と比較して手の機能や下肢筋力の改善を認めた。認知症高齢者を対象とした 3ヶ月間の抵抗運動介入では、大将軍と比較して筋力や身体機能が有意に改善した。認知症のあるフレイルな高齢者を対象としたコホート研究でも、 4週間の抵抗運動により筋力や身体機能の改善を認めている。日常生活の介助を必要とする Mini Mental State Examination(MMSE)10点以上の高齢者に対して高強度の筋力トレーニングを実施した研究では、認知症の有無で継続率に差は見られなかった。以上より、認知症者においても、各個人に合わせた運動によりサルコペニアやフレイルを改善させられる可能性がある。
認知症に限定した栄養療法の介入研究はないが、一般的にサルコペニアに対する栄養補給は、高齢者の筋肉量と筋力を改善させるため、運動とともに栄養補給も重要である。