認知症の認知機能障害を評価する際に有用な評価尺度と実施上の注意点は何か

推奨:

認知症の認知機能障害を評価する際に有用な評価尺度としてえ、スクリーニングには mini Mental State ExaminationMMSE)が臨床及び研究において国際的にも広く用いられている。

評価の対象、目的、環境などにおいて必要な検査を追加し、各患者の背景や状態を勘案して解釈することが望ましい。

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認知症機能症障害のスクリーニングとしては MMSE が臨床及び研究において国際的にも広く用いられている。一般に 23点以下 を認知症の疑いとするカットオフ値が使われている。

内容としては、見当識、言語性記憶、全般的注意・計算、言語といずれも言語機能を用いる検査が 29点、図形模写が 1点 の合計 30点 である。このため、MMSE は軽症例、病全能力の高い場合、視空間認知障害が主症状となる場合には感度が低く、一方、軽度でも言語障害がある場合には低得点となる。

わが国では改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)も一般的に使われており、MMSE と高い相関がある。HDS-R は総て言語を用いる検査で、記憶に関する項目は MMSE よりも多く、一般に 20点以下 を認知症の疑いとする。

軽度の認知症や軽度認知障害 mild cognitive impairment(MCI)の場合、Montreal Cognitive assesment-Japanese version(MoCA-J)や addenbrooke's Cognitive Examination-Revised(ACE-R)日本語版などが使用される。

また、MMSE にトレイルメーキングテスト、語列挙課題などの神経心理学的検査を加えると、軽度の認知症の診断率が高まる。

Alzhimer's Disease Assesment Scale cognitive Subscale Japanese versionADAS-Jcog)は、Alzheimer 型認知症で早期から障害されやすい記憶、視空間認知などを中心にしたバッテリーで、Alzheimer 型認知症患者の症状の推移を評価するのに使われる。

各認知機能についてより詳細な検討が必要な場合は、表1 の検査を適宜選択して施行する。また、上記の方法でほとんど得点できないような重度認証患者に対する評価として、Severe Impairment BatterySIB)、Severe Cognitive Impairmant Rating ScaleSCIRS)があり、日本語版での有用性が確認されている。

いずれの評価法を用いる場合においても、各評価のカットオフ値だけで異常かどうか判断するのではなく、病前能力や診断時の心身の状態などを十分考慮して、病前に比べてどう変化したかを的確に捉える必要がある。

表1


認知症疾患診療ガイドライン

症候、評価尺度、診断、検査