4C-3 重度認知症者への指導・支援
重度認知症者への指導・支援にはどのようなものがあるか
重度認知症者に対しては、生活環境や生活習慣を出来るだけ変えずに、医療と介護が継続的に受けられるように援助することが推奨される
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重度認知症は Clinical Dementia Rating(CDR)によって CDR3 と評価される状態である。CDR3 とは、重度の記憶障害があり、残っているのは断片的記憶のみで、人物に関するもの以外の見当識は失われ、問題解決や判断は不能で、家庭外では自律した機能は果たせず、家庭外での活動には参加出来ないようにみえ、家庭内でも意味のあることはできず、多大な介助が必要で、しばしば失禁するような状態である。重度認知症では、食欲不振、睡眠障害、失禁などの排尿障害、便秘などの排便障害、歩行障害などの身体症状の頻度が増す。また感染症、脳血管障害、低栄養で緊急入院することも多い。緊急入院の際に、一般の病棟に入院するよりも、医師、看護師、理学療法士、ソーシャルワーカー、カウンセラーがチームでかかわる特別な病棟に入院し、退院後も同じチームが在宅医療を担当するほうが、退院時の行動障害の程度、抗精神病薬の使用、l介護者のストレスが有意に低いとの報告がある。なじみの環境や生活習慣を変化させずに医療をうけられるよう、医療と介護を継続的に受けられる体制を調整することが推奨される
重度認知症者においては、施設入所が重要な検討課題となる。施設入所と関連した要因としては、認知症のタイプ(Alzheimer 型が多い)、生活機能障害の重症度、認知症の行動・心理症状 behavioral and psyochological symptoms of dementia(BPSD)の重症度、介護者の負担感、介護者のうつ症状が指摘されている。適切な在宅ケアマネジメントにより施設入所を遅らせることができるが、一方で、重度認知症者の施設入所を採取的に減らす事はできないことも報告されている。また、認知症が重度になるほど介護にかかるコストは増えていくことがわかっており、軽度・中等度の場合と比較すると、施設介護と在宅介護のコストの差は小さくなる
重度認知症者における肺炎や栄養障害の治療に関しては、エビデンスレベルの高い研究が存在しない。摂食嚥下障害に対しては、経管栄養よりも、介護者による少量ずつの経口摂取と口腔ケア comfort feedin by hand が望ましいとされている
米国のナーシングホームにおける調査では、重度認知症者に対して十分な根拠に基づかずにキノロン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬が使用されており、多剤耐性菌が蔓延しているという。重症認知症者のケア目的の多くは安楽 comfort であり、より賢明な抗菌薬の使用が望まれる