Alzheimer 型認知症の社会的支援にはどのようなものがあるか

介護負担を軽減するためには、初期から社会的支援を積極的に活用する事が必要である。利用可能な制度や社会支援について、ある程度知っておくことが望ましい

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若年性認知症に対する経済的支援、生活支援の詳細については、CQ5C-1〜4 を参照

1. 公的介護

40歳以上であれば、認知症疾患は介護保険の対象となる。介護保険の申請・認定を経てのサービス利用を早い時期から積極的に考えておくことが必要である

在宅介護支援(居宅サービス)としては、訪問サービス(訪問介護、訪問看護など)、デイサービス(通所介護)/デイケア(通所リハビリテーション)、ショートステイが重要である。訪問介護では、ホームヘルパーが居宅を訪問し日常生活上の介護を行う。デイタービス/デイケアでは、昼間に施設に通所して介護或いはリハビリを受ける。ショートステイでは、施設介護支援を提供する施設に短期入所する。グループホーム(認知症対応型共同生活介護施設)も介護保険上は在宅介護支援となる。その他の在宅介護支援としては、訪問リハビリテーションや訪問入浴介護などがある

施設介護支援としては、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老人保健施設)、介護療養型医療施設(療養型医療施設)の 3種がある。さらに、地域密着型サービスのひとつとして、小規模多機能型居宅介護があり、一施設で通所・訪問・泊まりのサービスを提供することが可能となっている

2. 医療

認知症疾患医療センターは、都道府県及び政令指定都市により設置される認知症を専門とした、地域で中核的な役割を担う医療センターであり、その役割は、認知症の診断、認知症の行動・心理症状 behavioral and psychological symptoms of demantia(BPSD)への対応、専門医療相談などである。また、医療で提供されるデイケアとしては重度認知症者デイケアがあり、入院施設としては認知症疾患治療病棟がある

3. 所得補償

認知症疾患のために、長期にわたり日常生活や社会生活が困難になった場合、一定レベル以上の障害を有し、受給要件を満たしていれば、障害年金の対象となる。また、特別障害者手当は「精神又は身体に著しい重度の障害を有するために日常生活において常時特別の介護を必要とする在宅で 20歳以上の者」に対して支給されるが、所得制限があり、施設に入所している場合は支給されない

4. 他の支援

通院医療費の助成(自律支援医療制度)は、指定医療機関において通院医療費の事項負担額が軽減される制度である。また、精神障害者保健福祉手帳は、精神障害のために長期にわたって日常生活や社会生活に制約があると認められた場合に、障害に応じて交付される。これらの詳細については、CQ5C-2 を参照

5. 成年後見制度と日常生活自立支援事業

成年後見制度は、認知症などの疾患により意志能力を損なわれた人々が、残された能力を活用し、安全で自分らしい生活を送る事を可能とするための制度であり、法定後見制度(後見、保佐、補助)と任意後見制度を含む。また、日常生活自立支援事業は、社会福祉協議会が中心となって運営している制度であり、判断能力が不十分な人が、福祉制度を活用して自立した生活が可能になるよう、本人との契約により援助する制度である。両者の詳細については、CQ5B-2 を参照

6. 利用可能な各種機関

地域において、認知症に関する最初の相談窓口になるのが、「地域包括支援センター」である。高齢者の在宅生活を支えるために、総合相談・支援、権利擁護、ケアマネジメント、介護予防などを行う公的機関である。また、認知症診断へのアクセスとその後の支援を一体的に提供する事を目的として、「認知症初期集中支援チーム」が(2017年度末までに)全市町村に設置される予定である。さらに、認知症に関わる当事者団体としては、「公益社団法人 認知症の人と家族の会」があり、全都道府県に支部を持つ民間団体として活動しており、 「認知症の電話相談」をおこなっている


認知症疾患診療ガイドライン

Alzheimer型認知症