徘徊、性的逸脱行動、暴力、不穏に有効な非薬物療法・薬物療法は何か

徘徊は、その理由・原因を認知症者の立場に立って考え対処する。徘徊の頻度の高い認知症捨二対しては、発見されやすくする対策を講じておく。薬物療法として、リスペリドンの処方を考慮しても良いが、科学的根拠は不十分である。チアプリドは、脳梗塞後遺症に伴う徘徊に保険適用を有しており、考慮して良い。しかしこれらの対応でも困難な場合は、施設入所サービスなどの介護サービスの利用も検討する。 認知症者の性的逸脱行動に対しては、まず環境調整を行い、また脱抑制を憎悪しうる薬剤を使用している患者に対しては、その薬剤の中止を検討する。薬物療法としては選択性セロトニンサイト込み阻害薬 selective serotonin reuptake inhibitor(SSRI)などが提案されているが、科学的根拠は乏しく、使用には十分な注意が必要である。 認知症者の暴力、不穏に対しては、焦燥性興奮の治療に準じる。

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認知症者に於ける徘徊、性的逸脱行動、暴力、不穏などにたいしては、非薬物療法を第一選択として行い、それでも対応困難な場合に薬物療法が選択される。これらの行動症状に対して使用する薬剤の多くは、適応外使用であるため、本人、家族に十分な説明を行い、有害事象に留意しながら使用する必要がある。また有効性が認められても漫然と服用させず、症状の改善に合わせて適宜減薬、もしくは休薬するなど副作用の低減を心がけなければならない。

1. 徘徊

周囲の人から徘徊と捉えられる行動には様々なものが含まれうるので、まずその行動の性質や理由・原因を、認知症者の立場になって考え対処する。また徘徊しているときは、切迫した気持ちになっている事が多いので、認知症者の訴えを傾聴し安心させることが重要である。頻回に徘徊する認知症者に対しては、平静時の対応も重要である。例えば、目立つ服を着て貰う、必ず着ていく服や靴に連絡先を書く、global positioning systems(GPS)機能のついた機器などを利用するなどを考える。また近隣の住民に支援してもらう事や、行政で徘徊者に対する仕組みを有している市町村では、それらに登録することも有用である。薬物療法については認知症者の徘徊に絞ってその有効性を検証した研究は無いが、認知症の行動・心理症状 behavioral and psychological sympotoms of dementia(BPSC)に対するリスペリドンの効果を調べたランダム化比較試験 randomaized controlled trial(RCT)において、徘徊に対して有意な改善を認めたとの報告があり、使用を考慮して良い。チアプリドは脳梗塞後遺症に伴う徘徊に対して保険適用を有しており、使用を考慮して良い。また焦燥性興奮を背景とする徘徊の場合は、焦燥性興奮の治療薬を検討しても良い。これについては、3B-2 を参照のこと。また睡眠パターンが改善して徘徊が減ったという報告があるがめ、睡眠障害を合併していれば睡眠障害の治療も検討する。これについては 3B-6 を参照のこと。さまざまな対策、治療を講じても対処困難な場合は、施設入所サービスの利用を考える。

2. 性的逸脱行動

静的膣脱行動を促進する環境要因の排除、気を紛らせる代替行動の導入などの非薬物療法を行う。また脱抑制を増をさせうるベンゾジアゼピンやドパミンアゴニストなどの薬剤を使用している場合は、これらの中止を考慮する。薬物療法としては、パロキセチン、ミルタザピン、クロミプラミン、トラゾドンアドの抗うつ薬、ハロペリドールやクエチアピンなどの抗精神病薬、ガバペンチンやカルバマゼピンなどの抗てんかん薬、抗アンドロゲン薬などが提案されているが、科学的根拠は乏しい。

3. 暴力、不穏

認知症に伴う暴力、攻撃性、不穏は、焦燥性興奮の要素の 1つでもあるため、焦燥性興奮に対する対応方の効果が期待出来る。3B-2 を参照されたい。


認知症疾患診療ガイドライン

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